離れていても心つながる、ムーミンの日2020

8月9日はムーミンの日! 2005年に原作者トーベ・ヤンソンの誕生日をムーミンの日と制定、世界中で祝ってきました。今年は最初のムーミン小説『小さなトロールと大きな洪水』の出版から75周年、しかも9日は日曜日とあって、盛大なイベントが期待されていましたが、新型コロナウイルス感染症の影響で大々的な集いは企画できず……。
それでも、悪いことばかりとは限りません! これまでイベントのほとんどは首都圏で開催され、地方のムーミンファンの皆さんからは参加したくてもできないという声が聞かれました。ムーミンの日イベントのメイン会場は昨年に引き続き、ムーミンバレーパークムーミン公式ファンクラブ会員ご招待はすでに終了していますが、年間パスポートや通常チケットで入場してお祝いに参加することはできます。
なんと、今年は「ムーミンバレーTV」と題して、ムーミンバレーパークと全国をオンラインでつなぐライブ配信が! 安全で涼しい自宅にいながらにしてムーミンの日をお祝いできるのは、今までになかったうれしい試み。8月9日(日)9:45~18:00(※変更の場合あり)、「メッツァ」公式YouTubeにて配信予定です。

また、ステイホームにおすすめのあれこれについてはこちらのページにまとめました。ムーミンの日オリジナルトートバッグプレゼントなどの関連企画についてはこちらをどうぞ。他にも、オンライン読書会「OSANPO in FINLAND(お散歩 イン フィンランド)」の動画配信など、全国から参加できる企画がいろいろありますよ。さて、この75周年のロゴマーク、ムーミンパパムーミンママムーミントロールの一家がしっかりとハグし合っています。ソーシャルディスタンスの真逆をいくポーズですが、実際に会って抱きしめあうことができなくても、遠く離れていても、心の距離はこの絵のようにぎゅっと近づけることができると思うのです。
ムーミンの物語の多くは、離ればなれの者たちが思い合い、やがて喜びの再会/出会いを果たすまでのお話ともいえます。いくつか例を挙げてご紹介しましょう。

まず、「八月の大パーティー」としてご紹介した『たのしいムーミン一家』の一場面。スナフキンが旅に出てしまってしょんぼりしていたムーミントロールは、飛行おにがみんなの望みをかなえてくれることになったとき、たくさんのご馳走の乗ったテーブルをそのままスナフキンのもとに届けてほしいと願います。自由気ままだけれど、手の込んだ料理とは無縁の旅の途中、このテーブルがいきなり目の前に現れたスナフキンはどんなにか驚き、そしてムーミントロールの気持ちを知って笑顔になったに違いありません。

8月5日に新版が発売になったばかりの『ムーミンパパ海へいく』では、不自由な灯台の島での生活に疲れたムーミンママが住み慣れたムーミン谷を恋しく思う場面が登場します。ムーミンママは壁いっぱいに大好きな花々を描き、大きなりんごの木、井戸、青いベランダ、居間のストーブと描き加えていって、壁画はどんどんムーミン谷に似ていったのです。ムーミンママは絵の中に入り込み、夕日のあたたかさを感じながら、ぐっすりと眠りました。10月初めに新版発売予定の最後のムーミン小説『ムーミン谷の十一月』は、ムーミン一家不在のお話。ちょうどムーミン一家が灯台の島にいた頃、フィリフヨンカミムラねえさんホムサ・トフトヘムレンさん、スクルッタおじさん、スナフキンといった面々が、それぞれの事情を抱えてムーミンやしきにやってきました。フィリフヨンカとホムサ・トフトはムーミンママ、ヘムレンさんはムーミンパパ、スクルッタおじさんはご先祖さまといった具合に、会うことがかなわなかった相手のことを深く思い、彼らだったらどうするかとあれこれ想像を巡らせます。その結果、いないはずのムーミン一家の気配が濃厚に漂い、その存在感が強く読者に伝わってくるのです。他にも、『小さなトロールと大きな洪水』はムーミンママとムーミントロールがいなくなったパパを探して旅をするお話ですし、『ムーミン谷の彗星』では彗星の正体をつきとめるために天文台に出かけたムーミントロールとスニフが、谷にいる両親や子ネコのことを思いながら旅を続けます。
『ムーミン谷の冬』で冬眠から目覚めてしまったムーミントロールは、暖かい南を旅するスナフキンが残していった手紙を何度も何度も読み返し、春を心待ちにします。
『ムーミン谷の夏まつり』では、ムーミントロールとスノークのおじょうさんちびのミイが家族とはぐれてしまい、ムーミンパパたちはすばらしい劇を上演すれば噂が息子たちの耳に入って再会できるのではないかとお芝居に取り組みます。

絵本『それからどうなるの?』もまた、おつかいに出かけたムーミントロールが怖い思いをしながらもママの待つ家までミルクを運ぶストーリーです。

絵本『さびしがりやのクニット』にいたっては、ひとりぼっちのクニットが海岸で助けを求める手紙を拾い、まだ会ったこともないスクルットの力になろうと、勇気をふりしぼって進んでいきます。そういえば、コミックス 第14巻 『ひとりぼっちのムーミン』 収録の「ムーミン谷への遠い道のり」はムーミンが幼い頃、両親とはぐれてしまってひとりぼっちで大きくなったという、小説とはまったく異なる設定です。お互いにそうと知らずに再会、ふとしたことから記憶が甦って親子だということが判明!
ムーミンコミックスにはびっくりするようなエピソードがたびたび登場します。9月24日から松屋銀座を皮切りに始まる予定の「ムーミンコミックス展」では、そんなコミックスの魅力を存分に堪能することができますよ。

今年の夏は海外旅行どころか、国内旅行も帰省も諦めなければならないかもしれません。でも、これはいっときのこと。大切な人や大好きな事と再会/再開できる日まで、オンラインなどの新たな取り組みも活用しつつ、楽しいことを夢見て乗り切りましょう。

萩原まみ