ムーミンママが苦手な家事は何?

9月25日は主婦休みの日。日本の新聞社が提唱している記念日で、1月25日、5月25日、そして9月25日と、年に3回あります(ほんとはもっと多くてもいいぐらいですよね!?)
今回のムーミンクイズはその主婦休みの日にちなんでの出題。ムーミンママが苦手な家事は何でしょう? 家庭的で、いつも優しいムーミンママ。家事だって完璧で“主婦の鑑!”といったイメージですが、実はムーミン・コミックス『ふしぎなごっこ遊び』(筑摩書房刊/冨原眞弓訳) に、“わが家はだらしなくてお気楽すぎるかも…”と悩む場面があります。

きっかけは、ムーミンやしきのお隣にフィリフヨンカと3人の子どもが引っ越してきたこと。みずから「家事のプロですの」と自己紹介するフィリフヨンカを、ママは家に招待します。ところが、応接間の真ん中にはなぜか大木が! びっくりするフィリフヨンカにムーミンママは「どうしても切り倒す決心がつかなくて…」と説明。「でも葉っぱが食べものの上に落ちますでしょ」と言われると、「春にはいい香りがしますよ」「カナリアにも受けがいいし、ものを吊るすにもぴったりでしょ!」と、ポジティブな理由(言い訳!?)を並べます。

お茶を勧められてカバーのかかったベッドに腰を下ろしたフィリフヨンカは、ベッドが妙にギシギシすることに気づきます。下を見ると、なんと大量の食器が! ムーミンママは「食器は雨水で洗うので それまではベッドの下に隠しておくんです 片づいてみえるでしょ?」と説明。
映画『劇場版ムーミン 南の海で楽しいバカンス』には、フィリフヨンカではなく海賊が食器の上に座って割ってしまうコミカルなシーンがありましたね。フィリフヨンカは「お宅にはお手伝いがいないんですの?」と尋ねますが、ムーミンママの返事は「いませんよ! 気分さえのれば家事も楽しいですし…」。続けて「料理だってわくわくしますよ…遭難してるつもりになればね!」「たまの大そうじには埃を爆発の煙だと考えたり大地震がおきたフリをするんです!」「庭だってジャングルだと思ったほうが楽しいわ」と持論を展開します。
一方、すべてのものが整然と並んだ自宅がご自慢のフィリフヨンカ。「家事というものは合理的でなければね!」と言いますが、ムーミンママは「合理的でなくても楽しければいいのでは?」。ふたりの主張は平行線で、フィリフヨンカから「お手伝いを頼みなさいな 家族への義務ですわよ!」とまで言われ、「わたしにはわたしのやりかたが! うちの家族はしあわせよ!」と思いながらも、ムーミンママの気持ちは揺らぎ始めます。そして、ムーミンやしきにお手伝いとしてやってきたのがミーサというわけです。
このお話は新作TVアニメ『ムーミン谷のなかまたち』第10話「ママ、メイドを雇う」でも描かれていますよ。

こうして改めて考えてみると、ムーミンママは家事全般が実はそんなに好きではないのかもしれません。一方で、小説にはムーミンママのお料理にまつわるエピソードがいくつかあります。たとえば、『ムーミン谷の彗星』で豪華なデコレーションケーキを作ってムーミントロールの帰りを待ったり、『たのしいムーミン一家』飛行おににパンケーキとジャムをふるまったり。
お料理以外では、『ムーミン谷の夏まつり』でムーミンやしきが水没してしまったとき、コーヒー缶のふたをちゃんと閉めておいたか案じたり、お皿を洗わなくてすむことを喜んだりしています。こんなセリフもありますよ。
「今日は、お皿は洗わないわ!」 ムーミンママはうきうきしてつづけました。「これからは、もうお皿洗いをすることなんてないかもしれないわね」(『ムーミン谷の夏まつり』(講談社刊/下村隆一訳/畑中真紀翻訳編集より引用)

つまり、ムーミンママの得意な家事はお料理、苦手なのは掃除や片づけと言えそうです。また、『ムーミン谷の仲間たち』収録の「目に見えない子」ではニンニにワンピースを縫ってあげていますし、『ムーミンパパ海へいく』(講談社刊/小野寺百合子訳)では木をノコギリで挽き、薪を作るのに夢中になる場面も。ムーミンパパが薪集めを引き受けようとしたとき、ママは怒って「これはわたしの仕事よ。わたしだって遊びたいわ」と言います。ムーミンママはおそらく、家事が嫌いだったり苦手だったりするわけではなく、義務感にとらわれて物事を楽しめなくなることが嫌なのでしょう。灯台の島で、ムーミントロールやちびのミイが自分の好きなところで眠るようになったときには、ムーミンママはこんなふうに言っています。
「母親というものは、すきなときに外にいって寝るというわけにいかないのがざんねんね。ほんとは母親こそ、そういうことがときにはできるといいのにさ」(『ムーミンパパ海へいく』講談社刊/小野寺百合子訳より引用)現実の世界では家事や仕事が避けようのない義務だという場合もありますが、ムーミンママに倣って何かしら楽しい一面を見いだして取り組めば、少しは楽になるのではないでしょうか。それでもしんどいときはお休みするもよし、お手伝いさんを雇ったフィリフヨンカやムーミンママのように誰かの助けを借りるもよし。もしかしたらムーミンママがスーパー主婦なのは、家事が得意だからではなく、うまく息抜きする方法を知っているからなのかもしれません。

萩原まみ