ムーミンの日2022をご一緒に!【ムーミン春夏秋冬】

8月9日(火)はムーミンの日
原作者トーベ・ヤンソンの誕生日8月9日がムーミンの日と制定されたのは、ムーミンシリーズ最初の一冊『小さなトロールと大きな洪水』出版60周年にあたる2005年。それから毎年、さまざまな趣向で祝いをしてきました。
そして、今年はムーミンの日が一般社団法人日本記念日協会に登録、認定。ますますたくさんの方にムーミンを知っていただくきっかけにもなりそうですね!

今年のキーアートはどんな場面?

毎年、ムーミンの日の特別なキーアートを配したオリジナルトートバッグのプレゼントやマグなどの限定グッズが人気を集めています。
今年はムーミンママムーミンパパムーミントロールの三人が水辺を歩いているシーン。夏らしい配色が素敵ですよね。

これはムーミン・コミックス第14巻『ひとりぼっちのムーミン』収録の「ムーミン谷への遠い道のり」の1コマ。
1955年発表の第2話で、コミックスにママとパパが初登場する驚きのお話なんです。

家も家族もお金もなく、ひとりぼっちのムーミントロール。いっそ溺れてしまおうとしますが、ぽっかり浮いてうまくいきません。
そこにボートで通りがかり、助けてくれたのは、見知らぬムーミン族の男女(!)。まるで親子のように並んで歩きながら、ムーミントロールは自分の孤独な身の上について語ります。

差し出されたマグを見たムーミントロールの心の中に、子ども時代の記憶がよみがえり、三人は離ればなれの家族だったことが判明!

「これからはずっと一緒!」と涙ながらにハグする母子。しかし、抑えきれないパパの冒険心ゆえに、穏やかな日々は長くは続かず……。

ひとりぼっちのムーミントロールに寄り添うスナフキン

このエピソードには、2022年夏の新シリーズ「The summer time(ザ サマータイム)」のムーミントロールとスナフキンの場面も。

せっかく再会を果たしたのに、またいなくなってしまったパパとママ。嘆くムーミントロールにスナフキンは「親にだって気分転換は必要」と語り、「ぼくと一緒に泳ごう」と提案します。
そして、テント暮らしに誘い、励ますようにアコーディオンを奏でるのです。 

ムーミン一家はいつも仲良し、そんなイメージを覆す衝撃的な展開ですが、ここには人間関係に悩む読者へのヒントが隠されているように思います。
家族だからという理由だけで自分の気持ちを抑えて一緒にいなければいけないわけではないですし、ときには血縁ではない誰かが家族のような存在になることもあるでしょう。

評伝『トーベ・ヤンソン 人生、芸術、言葉』などの資料によれば、トーベ自身も折り合いのよくない父親のもとを離れて自身のアトリエに移り、トゥーティッキ(おしゃまさん)のモデルとなったトゥーリッキ・ピエティラという伴侶と一緒に生きました。

今年のテーマは「一緒に」

ムーミンの小説にも、印象的な言葉が登場します。

「はっと急に、スナフキンは一家のことが恋しくて、たまらなくなりました。あのひとたちだって、うるさいことはうるさいんです。おしゃべりだってしたがります。どこへ行っても、出くわします。でもいっしょにいても、ひとりっきりになれるんです。」(新版『ムーミン谷の十一月』/講談社刊/鈴木徹郎訳/畑中麻紀翻訳編集より引用)

ムーミンやしきで、ヘムレンさんフィリフヨンカと共同生活を余儀なくされたとき、スナフキンはそんなことに気づきました。

一緒にいると楽しくて、でも自分らしくいられて、お互いに負担にならない関係、それが理想かもしれません。
もし、今、そんな相手がいなかったとしても大丈夫、本を開けば、いつでもムーミンたちと一緒に過ごすことができますよ。

萩原まみ(text by Mami Hagiwara)