(215)ムーミンで繋がるフィンランドと日本【フィンランドムーミン便り】

この夏ストックマンデパートでは全館のあちこちにムーミンたちがいる

 

ヘルシンキの中心部にあるストックマンデパートは、かつて「ここに売っていなかったらフィンランドでは手に入らないと思ったほうがいい」と言われるほどだった。待ち合わせ場所に「ストックマンの時計の下で」は定番だったし、そんなタイトルの本が出版されたことがあったほどだ。そのデパートの外観に大きなムーミントロールが設置され、まるでムーミンの聖地のような装いになっている。ストックマンデパートとムーミンのこれまでの接点を辿る展示(デパート8階にて8月31日まで開催中)は、フィンランドでのムーミングッズの歴史を見るようでもあり、小さい規模ながら見応えがある。さらにデパートのあちこちにムーミンたちがいるのが面白い。全館をつかったクイズラリーまでやる力の入れようだ。

ムーミンショップでもスタンプラリーをやっていて、フィンランド国内にあるムーミンショップ2か所以上でお買い物してスタンプをもらうと記念品がもらえる。実はこういうラリーはフィンランドでは珍しい。そもそもキャラクターをグッズ化させる文化もそれほど活発ではないフィンランドで、ムーミンの動向はどこか日本との近さを一層感じさせるものがある。

日本のムーミングッズが買いたい。写真を手がかりに日本語のサイトを検索して日本のムーミングッズをチェックする人は以前からいた。そしてついに日本のムーミングッズを希望する人の声が届いたのか、ヘルシンキのムーミンショップで「ジャパン・ウィーク」と題したイベントを開催することになった。

ムーミン関連の小さな展示をするガラスケースの中にはわずかではあるけれど、かつて日本で制作されたアニメーションに関連した絵本やグッズが展示された。キャラクターとしてはフィンランドでも人気なのにグッズ展開は控えめなニョロニョロのグッズ、日本でもフィンランドでも人気のリトルミイのポーチや文具、バッグひとつとっても日本らしい細かな工夫が施された日本のムーミングッズが並ぶ。私はシールでもアイロンでも貼りつけられるワッペンをいくつも買い、ノートや手帳に貼りつけたり、友人たちにプレゼントしたりした。

このタイミングで公開されたのがトーベ・ヤンソン初来日の際の日本語スピーチ。

トーベ・ヤンソンの良き友人でもあった建築家ピエティラ夫妻のところで働いていた日本人建築家が、スピーチの練習に付き合ってくれた。それがどんなスピーチだったのか、これまで明かされることはなかった。ところがトーベのパートナーのトゥーリッキ・ピエティラが8ミリ映像だけでなくカセットテープで音声を録音していたものが見つかり、しまいにはトーベ・ヤンソンがスウェーデン語で書いた元原稿も見つかったといい、ユーチューブ上で限定公開されることになった。スピーチの練習は日本に向かう前のことなので、ここでトーベが語る日本の色彩に対する思いは、実際に日本で体験する前のことだ。日本に滞在し旅をしながら、トーベは日本の色彩感覚をどんな風に考えていたのだろう。

 

ジャパンウィークで大人気だった日本のワッペンでノートをカスタマイズ。右はフィンランドの80周年グッズ、缶入りミントキャンディ。

森下圭子