冬眠しそびれたムーミンたちの「SNOWY WAY HOME」【ムーミン春夏秋冬】

ムーミン80周年で盛り上がった2025年も残すところあとわずか。今年最後のブログ「ムーミン春夏秋冬」ではウィンターシーズンにぴったりのプロダクトシリーズ「SNOWY WAY HOMEについて深掘りしたいと思います。

SNOWY WAY HOMEの元になったストーリーは?

SNOWY WAY HOME」の出典を探すには、ムーミンママのリュックからのぞいているかわいい顔にご注目。コミックス第6巻『おかしなお客さん』に登場するクリップダッスです。どんなお話なのか、詳しくご紹介していきましょう。

地面が凍ってニンジンが掘り出せなくなり、冬が来たと気づいたムーミンたち。今年はスポーツ大会やらキザなブリスクやらに振りまわされることなく、しきたりどおりに冬眠をしようと気合を入れてベッドに入りました。ところが、雪のなか訪ねてきた人に起こされてしまい、ムーミンパパは慌ててパジャマを脱いで帽子をかぶり、ムーミンママもネグリジェからエプロンに着替えて、お出迎えします。寝るときには服を着て、来客があると脱ぐという、思わずクスッと笑ってしまうシーンです。

驚くべきことに、フルフィンスと名乗るこの人物、ムーミン一家とはまったくの初対面。例年より雪が早くきて南に行きそびれ、冬を越せる家を探していたと言います。自分たちは冬眠に戻るつもりで、フルフィンスさんを迎え入れたムーミンママ。また寝間着を着て、ぐっすり眠ろうとしたとき、またしても玄関に人の気配が。

南へ向かう途中で冬になってしまい、客をもてなすのが好きなおかしな家があるとの噂を聞いてやってきたグリムラルン。ムーミン一家は戸惑いつつも、みんなで冬眠ができるよう、ベッドの準備をします。雪がどんどん積もって玄関が埋まり、これでもう誰も来ないだろうとお布団に戻ったとき、二階の窓に人影が。

小包を抱えた郵便屋さんでした。クリスマスプレゼントかな、なんて言いつつ箱を開けると、顔を出したのはいたずらっ子のクリップダッス!

思わずフタを閉め直し、郵便屋さんに引き取ってもらおうと雪のなかに飛び出すムーミントロール。でも、残念、すでに郵便屋さんは行ってしまった後でした。

余談ですが、窓枠に立つムーミントロール、どこかで見たような? そう、ムーミン80メインアートの元になった絵です。ちなみにフルフィンスさんは「MOOMIN ALL STARS」にも登場しています。

 

雪のなかを進むムーミンママ

クリップダッスを郵送してきたのは、子育てに疲れてしまったクリップダッスのママ。穏やかに冬眠したいムーミン一家は、3人の子どもをしっかりとしつけているお隣のフィリフヨンカに託すのがよいだろうと判断。ムーミンママはクリップダッスをリュックに入れ、コンパスを片手に、傘で雪を堀りながら進んでいきました。

この雪に飛び下りる絵と、雪のなかを進む場面が「SNOWY WAY HOME」に使われています。

 

クリップダッスの世話をするのは誰?

無事にフィリフヨンカ宅にたどり着いたムーミンママ。フィリフヨンカの失礼な物言いを受け流し、クリップダッスを引き取ってもらおうと試みます。それなのにクリップダッスときたら、きちんと整頓されたフィリフヨンカの引き出しを探り、隠してあったおもしろパンツを披露。

ムーミンママは諦めて、次の候補、署長さんのいる交番へと向かいました。ここでも署長さんのポケットからお菓子を取って食べたり、靴下の穴にインクを塗って隠しているのを暴露したり、やりたい放題。最後の頼みの綱として薦められたのは、新しい孤児院でした。

孤児院の使命は立派な市民を育成すること。身長順に並ばされ、しっぽの角度まで管理されている様子を見たムーミンママは、ここには預けたくないと心を決め、「おうちに帰ろう」と言いました。ムーミンママの愛情深さ、潔さが伝わる感動の展開……! ですが、ここからが試練の始まりでした。

 

大騒ぎの冬

おとなしく眠ってくれるわけがないクリップダッス、あれやこれやと注文の多いフルフィンスとグリムラルン。ついに冬眠を断念したムーミンたちでしたが、そうなると食料が足りません。ムーミントロールはスキーを履いてトナカイかクマを探しに出かけます。

でも、実際にヘラジカに出会うと、生きているものを倒すことはできませんでした。

雪に閉ざされたムーミンやしきで、クリップダッスはみんなの隠しごとを暴いておもしろがり、弱みにつけこんで甘やかされようとします。ダイエット中と言いながら隠れてお菓子を食べるスノークのおじょうさん、コワモテだけどレース編みが趣味のグリムラルン、遠慮がちなご婦人なのにウィスキー党で兵隊さんごっこが好きなフルフィンス、裏表のないムーミンママにも秘密が!? 最後にはとてもトーベらしい、素晴らしいオチが待っていますので、続きはぜひコミックスをお読みくださいね。
また、ムーミンのお話に出てくる他のクリップダッス(ニブリング)たちについてもこちらで詳しくご紹介しています。

 

リトルミイはどこから?

SNOWY WAY HOME」のリトルミイコミックス第9巻『彗星がふってくる日』で発見!

両手を上げた小さな絵が、そりに乗っているみたいにアレンジされています。

雪玉を押しているポーズは実はムーミントロールを押していたんですね。

2つのエピソードの組み合わせによって誕生した「SNOWY WAY HOME」のなかで、新しいストーリーが広がっていきます。さまざまなグッズを手にとって冬のムーミン谷に思いをはせつつ、クリップダッスとリトルミイが顔を合わせたらどうなっちゃうの?なんて想像してみるのも楽しいかもしれません。

 

ムーミン80周年を振り返って

最後に、とても濃かった2025年をざっくりと振り返ってみましょう。なんといっても久しぶりにホール開催になったムーミンの日イベント大阪・関西万博に、新店舗ムーミンカフェ フローラルバレーのオープン、東京を皮切りに始まった「トーベとムーミン展」は今後、長野、愛知、福岡、兵庫と巡回予定です(詳細はこちら)。ムーミンバレーパークの「ムーミン谷のルミナスナイトショー」初登場のご先祖さま話題沸騰! 感想文コンテストには力作が多数寄せられ、授賞式もおおいに盛り上がりました。
SNOWY WAY HOME」のベースとなった『おかしなお客さん』も『彗星がふってくる日』も、まさに80周年のテーマ“The door is always open”を表したお話です。雪の日も、彗星が迫ってきたときも、ムーミンやしきの扉は開かれています(クリップダッスみたいに最初から大歓迎とはいかないケースもありますが)。どうかムーミンが皆さまのよりどころとして愛され、この勢いのまま楽しいことがたくさん続いていきますよう、来年も引き続きよろしくお願いいたします。

文/萩原まみ(text by Mami Hagiwara