ニョロニョロが船に乗るときは奇数、偶数?

今回のムーミンクイズは謎めいた白い生きもの、ニョロニョロの不思議な生態からの出題です。ニョロニョロたちがボートに乗るときの数には法則があるといわれています。それは偶数でしょうか、奇数でしょうか?その答えが登場するのは、『ムーミン谷の仲間たち』(講談社刊/山室静訳)収録の短編「ニョロニョロのひみつ」です。

だいぶむかしのこと、ムーミンパパは斜めに帆をあげた白いボートに乗って海へと漕ぎだすニョロニョロたちを見て、「ぼくはもうベランダでお茶なんかをのんではいられないぞ」と、はっきり感じました。その思いはずっとパパの心に残って、消えませんでした。そして、ある暑い日、パパは家を出て、いきあたりばったりに歩きだしたのです。石ころだらけの長い浜べに出たとき、沖のほうからニョロニョロの乗ったボートがゆっくりと近づいてきました。ボートに乗っていたのは、船体や帆と同じ、真っ白な、たった三人のニョロニョロでした。

三人のニョロニョロ。つまり、正解は奇数!

今回のムーミンクイズは少し簡単だったかもしれませんね。最近はグッズでも、ニョロニョロは奇数で描くのが基本ルールとなっています。でも、原作の挿絵をちょっとよく注意深く見てみてください。……あれ? 偶数でボートに乗っている絵もある!?

では、もう少し、「ニョロニョロ奇数説」の根拠を探してみましょう。

ニョロニョロはいくつかのムーミンのお話に顔を出します。最初のムーミン小説『小さなトロールと大きな洪水』には、ムーミンママたちがニョロニョロのボートに乗り込んで海を渡る場面が。この本のなかでニョロニョロは、“放浪者”“小さなトロールのおばけみたいなもの”“感情というものがまったくない”“口もきけないし耳も聞こえない”“あまりかしこくない”などと表現されています。
『たのしいムーミン一家』ではニョロニョロが年に1回、大集結する島にムーミンたちが上陸してしまい、夜中にニョロニョロがテントに入り込んで大騒ぎに。このエピソードをアレンジしたのが、Blu-ray/DVD予約販売が始まった新作アニメ『ムーミン谷のなかまたち』第6話「ニョロニョロの島」です。

『ムーミン谷の夏まつり』には、スナフキンがニョロニョロの生態を利用して、公園番に復讐する場面があります。このエピソードも『ムーミン谷のなかまたち』第7話「スナフキンと公園番」で描かれていますよ。コミックスでも「ひとりぼっちのムーミン」はじめ、いくつかのお話に登場します。これだけ大量だと奇数か偶数かなんてわかりませんね! では、なぜニョロニョロは奇数とされるのか。それはさきほどの小説「ニョロニョロのひみつ」に次のような記述があるからです。

ついで、一そうまた一そうと、黒いもやの中からボートがでてきて、みんなおなじ方向にすすんでいきます。のっているのはニョロニョロばかりでした。七人のっているの、五人の、十一人の、ときにはたったひとりしかのっていないのもありました。いずれにしても、みんな奇数でしたけれど。
(『ムーミン谷の仲間たち』収録「ニョロニョロのひみつ」講談社刊/山室静訳より引用)

でも、奇数である理由は書かれていませんし、さきほどのように偶数で描かれている挿絵もあります(見えないだけでボートのどこか見えない位置にもうひとり隠れているのかもしれませんが)。また、コミックスでは言葉を喋ったり、絵本では座ってお茶を飲んでいたり、知れば知るほどニョロニョロには謎がいっぱい! トーベ・ヤンソンの自由さが、ニョロニョロの設定にも表れているといえるでしょう。ムーミンパパがついつい追わずにはいられなかったように、ミステリアスな魅力で読者を魅了するニョロニョロ。大流行中のタピオカみたいな“ニョロニョロのたね”入りのドリンクを提供するムーミンスタンドではストローにニョロニョロの飾りがついていたり、店内にニョロニョロにまつわるトリビアが散りばめられていたり、ファンにはたまらない演出がたくさん。フィンランドのムーミンカフェではニョロニョロのメレンゲが、日本のムーミンカフェではニョロニョロのエクレアが人気を集めています。そんなニョロニョロについてもっと知りたくなったら、今回ご紹介したお話を読んでみてくださいね。

萩原まみ