昭和から平成、令和へ。ムーミンアニメの歴史

明日11月6日(土) 午前10時30分~、新作アニメ『ムーミン谷のなかまたち』が待望の地上波(Eテレ)にて放送開始! アニメ公式サイトもオープンしました。すでにBlu-ray&DVDもシーズン1シーズン2と発売されていますが、もっと気軽にたくさんの方にご覧いただけるようになりますね!

そこで今回は、ムーミンアニメの歴史を紐解いてみたいと思います。

ムーミンにはトーベ・ヤンソンが生み出した小説コミックス絵本があり、それらを原作としてアニメや舞台作品、バレエオペラ人形劇などが作られてきました。

二次創作の先駆けとなったのは、大好評上映中の映画『TOVE/トーベ』でも描かれているムーミン劇『ムーミントロールと彗星』。トーベ自身が脚本と舞台美術、衣装まで手がけ、1949年にヘルシンキのスウェーデン劇場で上演されました。

映像作品という意味では、1959年、テレビシリーズ『ムーミン一家』が西ドイツで放映されたのが最初。これは操り人形を撮影したもので、「初のムーミンアニメ」とされることもあるのですが、アニメというより実写に分類するほうが適切でしょう。こちらから動画がご覧になれます。

とすると、アニメーションとしては、日本で作られた『ムーミン』が世界初ということになります。今でもテレビのバラエティ番組でムーミンが紹介されるとき、「ねえ、ムーミン」という歌が流れることが多く、幅広い世代から親しまれてきた作品です。

しかし、1969年と1972年からの二期にわたってフジテレビ系で放送された『ムーミン』通称「昭和ムーミン」「昭和アニメ」は原作とあまりにも違っていたため、現在では放映もソフト化も許可されていません。

10月26日に発売されたばかりの評伝『トーベ・ヤンソン 人生、芸術、言葉』(フィルムアート社刊/ボエル・ヴェスティン著/畑中麻紀・森下圭子訳)では、1971年にトーベが来日したときの様子が次のように綴られています。

アニメを放映したフジテレビとの協議もあった。(略)キャラクターは歪曲されていて、本来とはかけ離れた設定になっており、ムーミンパパがムーミントロールを叩く場面があったり、ムーミン谷で戦争が勃発したり、非暴力を徹底している原作本の世界とは根本的に違ったものになっていたのだ。そして、ムーミントロールは体の色まで変えられてしまっていた。トーベはすぐに動いた。日本での放映を止めることはできないが、外国での放映をストップさせたのである。(『トーベ・ヤンソン 人生、芸術、言葉』より引用) 

トーベも後年は、自分の描いたムーミンと違っていても子どもたちが喜ぶならばそれでいいと昭和版『ムーミン』を肯定する発言をしていたそうです。
1969年版と1972年版の第1話はこちらから見ることができます。

1970年代には、ポーランドでストップモーションアニメの「ムーミン・パペット・アニメーション」が作られました。

その後、1990年にテレビ東京系で新たに『楽しいムーミン一家』が始まります。通称「平成アニメ」と呼ばれるシリーズです。この作品には制作段階からトーベと、コミックスの共著者であり、英語の得意なラルス(ラッセ)が深く関わっています。トーベ本人が携わったアニメ作品は、ポーランドのパペットアニメと、この『楽しいムーミン一家』だけ。日本の制作陣もムーミンが大好きで、その世界観を大切にしよう、という共通認識を持っていました。
オーディションでトーベから選ばれたキャラクターデザインの名倉靖博氏によれば、きっちりと監修は経ていたものの、トーベやラルスから大きな修正が入ることはなく、アニメオリジナルキャラクターである魔女のアリサとクラリッサ、原作では姿の描かれていない氷姫などのデザインもすんなりと通ったとのこと。

スノークに前髪があり、眼鏡をかけているのも平成アニメ独自の演出で、その姿はフィンランドにあるテーマパークのムーミンワールドアプリゲームぬいぐるみなどにも引き継がれています。
名倉氏のインタビューやムーミンアニメの歴史は『Pen+(ペン・プラス)~名作が愛される理由を探る、ムーミン完全読本。』もぜひご参照ください。本国サイトにも写真入りの詳しい記事があります。

このシリーズは原作者のお墨付きもあり、世界120カ国以上で繰り返し放映され、ムーミン人気が定着する大きなきっかけとなりました。
現在日本ではソフトは入手困難ですが、英語版がyoutubeのMoomin Officialアカウントで公開されています。過去の記事「世界のTVシリーズ」では、着ぐるみの頭を脱いでしまう衝撃の演出があったスウェーデンの実写版など、激レアな作品をご紹介しているほか、本国サイトの記事「The history of Moomin animations is full of surprises」でもたくさんの写真を見ることができますよ。

テレビシリーズではありませんがアニメ作品ということでいうと、2014年(日本公開は2015年)、『劇場版ムーミン 南の海で楽しいバカンス』が新たに作られました。そして、2019年、テレビシリーズとしては実に約30年ぶりの新作アニメ『ムーミン谷のなかまたち』が登場! 奇しくも元号が令和と改まった年で、通称「令和アニメ」「新作アニメ」と呼ばれることも。

同作の大きな特徴としては、フィンランドとイギリスのチームの共同製作による最先端の技術を駆使した美しいCGアニメであることと、時代に合わせた独自のアレンジがなされている点です。

海外でも複数の賞を受賞するなど、高い評価を得ています。地上波で放映が始まるシーズン1は、コミックス「家をたてよう」をベースにしたにぎやかなエピソード「リトルミイがやってきた」で幕開け。スピーディーかつウィットに富んだ演出で、テンポよくお話が進んでいきます。昭和版『ムーミン』で主人公の声を演じたのは名優、岸田今日子氏でした。まだ日本での知名度が低かったムーミンのイメージを決定づけたのが陰影に富んだ声の演技だったといいます。
平成版ムーミン役は『名探偵コナン』で知られる高山みなみ氏。
日本では歴代、女性が演じてきたムーミントロールの声を、令和版では寺島惇太氏が務めています。物語全体の解釈がやや現代的になっている上、声も男性なので、今までのアニメと比べるとムーミントロールの年齢が少し上ったような印象も受けるかもしれません。
スナフキンを人気俳優の高橋一生氏、リトルミイを『ポケットモンスター』のピカチュウ役でおなじみの大谷育江氏が演じているのも注目ポイントで、2020年にはキャスト一同 が第14回声優アワードにて「キッズファミリー賞」を受賞しました。

時代を超え、表現方法は変わっても、ブレないのはムーミンたちの自由さと愛らしさ。地上波でより多くの方にその魅力が届きますように!

萩原まみ