(222)感情の引き出し【フィンランドムーミン便り】

ムーミン好き同士でクリスマスに同じものをプレゼントし合ってしまったのは私だけではなかった模様。

フィンランドでは1990年代初頭から繰り返し放送されているアニメシリーズ『楽しいムーミン一家』。その音楽をオーケストラが演奏して、という話は11月のフィンランドムーミン便りでしたばかり。そのコンサートは2月からフィンランド国内をツアーすることになっている。

オーケストラが演奏するムーミンアニメのコンサートは19曲で構成。曲名をみれば明らかなのだけれど、昨年の夏から配信も始まったアルバム「楽しいムーミン一家オリジナル・サウンドトラックベスト」(全32曲)と異なる楽曲も多い。その謎がとけたのは、このコンサートのためにムーミンアニメの音楽をオーケストラ用にアレンジした二人とムーミンアニメの音楽を作曲した白鳥澄夫さんが話す場に居合わせたからだった。

白鳥さんが2年かけて作曲したムーミンアニメの音楽は軽く200曲を超えていた。実際にアニメで使われたのはそのうちの100曲ほどだったという。オーケストラ用にアレンジした二人は、そこから19曲を選んだのではなく、アニメで使われた100のうち60曲ほどを組み合わせて19のオーケストラ用楽曲にしたのだという。60曲を19曲にすると聞いて、どれをどれと組み合わせようとか、どの曲からどの曲へ繋ごうとか、そうとう大変な作業だったのでは?と思って聞いてみると、とても自然な作業だったという。

「感情の引き出しがあって、それぞれの曲がそれぞれの感情の引き出しの中に入っていたから」と話してくれた。そういえば、ムーミンを見て「怖い」という言葉を覚えた子の話を聞いたことがある。それから難民としてフィンランドにやって来たソマリアの子が、ムーミンアニメでフィンランド語を覚えたと話していたこともある。ムーミンアニメや背後に流れていた音楽は見ている子どもたちと、怖いだけでなく嬉しい、悲しい、ドキドキする、ワクワクするなどさまざまな感情で共鳴し合っていたのだろう。

オーケストラの若い演奏家たちは楽譜をもらった瞬間にアニメの場面がでてきたという。客席にいた観客たちは、音楽を聴きながら、さまざまな場面を思い出し、そして泣いたり笑ったりしていた。そこは思い切り自分の感情を出せるくらい安らかな場所だったとSNSで感想を残していた人たちもいた。コンサートのあと、保育園から帰って来てムーミンアニメを見るという火曜日の夕方が一週間の一番のお楽しみだったと話してくれたのは、現在は自らがアニメを手がけるようになり、音楽も自分で作っている方だった。

子どもの頃、まだ多くの言葉を知らなくても生きている限りさまざまな感情を抱く。だから感情を自分でうまく伝えられないだけでなく、掴みきれないとか、感情に振り回される場面だってあると思う。そんな子ども時代にムーミンのアニメがあって、音楽があって、自分の中で少しずつ感情の引き出しを増やしていく様子を想像してみた。かつては自己肯定感が低いと自ら語っていたフィンランドの人たちがそうでなくなってきた背景には、感情の引き出しを小さな頃からいくつも持っていて人と関わり自分と向き合って来たことが少なからず影響しているのでは?なんてことを考えていた。

モランが人気者になった理由を探ってみると、アニメでモランと共に流れる音楽がかなり影響しているのが分かる。