【O】Observatorio(天文台)

ムーミンバレーパークのちょっとディープな情報を、AからZまでのキーワードにして、
アルファベット順にご紹介していくムーミンバレーパークのA to Z

【O】Observatorio(天文台)

Observatorio(オブセルヴァトリオ)は、フィンランド語で、そのまま、「天文台」を意味します。

奇しくも、天文台が登場する原作『ムーミン谷の彗星』でも、学者たちの推測では、まさに今月のこの記事を掲載している「八月」-八月七日の午後八時四十二分に、彗星が地球に衝突する、と言われていました。

天文台への旅のはじまりは、空や川、まわりのすべてが灰色になったムーミン谷で、危険な星により、じゃこうねずみにこのまま地球が滅びると言われ、落ち着かなくなってしまったムーミントロールとスニフに、子どもたちが星のことしか考えられないなら、いっそのこと、見にいったらいい、というムーミンパパからの発案。地球が滅びるかもしれないのに、どこかにやらないでと、怖がるムーミントロールに、見てきてくれたらみんなが助かるわ、私も安心するわ、というムーミンママの一言がムーミントロールの心を動かし、スニフとおさびし山の天文台へ向かうことを決意します。その途中に、スナフキンと出会い、その星が「彗星」という名前で、それは、ひとりぼっちの星で、正気を失っている星だと教えてもらいます。

おさびし山のぎざぎざした峰のてっぺんにある天文台では、学者たちが星だけを相手に暮らしていました。天文台の塔には、ガラスの丸屋根に虹のような七色のガラス玉が飾られていて、その中には、世界最大の天体望遠鏡がありました。

ムーミンバレーパークのコンセプトを考える中で、物語の追体験ができる施設をパーク内に点在させて再現する、となったときに、原作の中で重要な役割を果たす「天文台」はやはりマストでした。
実際に天文台のようなものを建て、その中に天体望遠鏡を設置して、星を観察できるようにしたらどうか、という案も出て、どのように再現をするか、それを形にするまでにたくさん話し合いをしました。
そして、いちばん私たちを悩ませたのは、原作にある「世界最大の天体望遠鏡」という表記です。
“世界最大の天体望遠鏡が置ける天文台”を本当に作るとなると、おさびし山エリアがそれだけで埋まってしまいますし、その設備が完備できる建物を建てたり、天体望遠鏡をもってくるだけでも、考えられないくらいの費用がかかることがわかりました。それでも、物語にできるだけ忠実に再現したい!という思いはあり…

さて、どのように解決したかは、言わずもがな、です。

こだわりポイントとしては、おさびし山の頂上の天文台まで、ムーミントロールたちが、険しい道のりを越えて、本当に苦労して行ったのだなということが伝わること、天文台のてっぺんのガラス玉の表現です。
ぜひ、みなさんも次にパークに行かれる際は、物語よりは険しくないかもしれないけれど、ちょっと急勾配なおさびし山エリアまで足を運び、ムーミントロールたちの勇敢な冒険に、思いを馳せてみてください。

 

「天文台」のモデルはトーベが育った身近な場所に

フィンランド政府観光局のページには、トーベのゆかりの地をめぐる特集記事があり、その中には、天文台のモデルと言われる場所も登場しています。

ヘルシンキのトーベが通った学校や、長年住んだアトリエの近くにある「スタータワーマウンテンパーク(星塔山公園)」(フィンランド語ではTähtitorninvuori。英語では、Observatory Hill Park)

名前の「星塔山」からも、星を観るための塔=天文台のイメージが浮かびますね。

この天文台が完成したのは、1834年。当時、この天文台は最先端の施設であり、ヨーロッパの他の多くの天文台のモデルとなったという記述もありますので、お話の中に登場する「世界最大の天体望遠鏡」も、あったのでしょうか。

記事の中にも、この天文台は、トーベの作品に多大な影響を与えた、とあります。

ヘルシンキ大学の天文台は、トーベの作品に多大な影響を与えました。彼女の小説やコミックに登場する教授、哲学者、そして世界最大の天体望遠鏡などは、この天文台からヒントを得たものです。「ムーミン谷の彗星」は、その代表的な例だと言えましょう。

これを読んだときに、ミムラねえさんが登場しているシーンの一文が、ふとよぎりました。

「なんでもたのしくすごすことぐらい、すてきなことなんてほかにないし、それってとてもかんたんなことなのです。」(『ムーミン谷の十一月』

退屈かもしれない日常を楽しくすごすことはとっても簡単。それをまさに実践していたのがトーベ自身。

まわりの人びと、近所の散歩場所、身近なものから着想を得て、トーベの偉大な創作は生まれたのかな、なんて想像してみたりすると、みなさんの日々の身近な暮らしの中にも、のちの後世に残るかもしれないような、いろんなクリエイティブの種がたくさん散らばっているのかもしれませんね。

 

参照:トーベ・ヤンソンのヘルシンキ

 

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株式会社ムーミン物語
川崎 亜利沙
(text by Arisa Kawasaki, Moomin Monogatari ltd.)