【N】Nuuskamuikkusen teltta(スナフキンのテント)

ムーミンバレーパークのちょっとディープな情報を、AからZまでのキーワードにして、アルファベット順にご紹介していく「ムーミンバレーパークのA to Z」

【N】Nuuskamuikkusen teltta(スナフキンのテント)です。

スナフキンはフィンランド語でヌースカムイックネンという長い名前ですが、スナフキンの、になると、ヌースカムイックセン、になります。
この場所は、フィンランド語でそのまま“Nuuskamuikkusen=スナフキンの”、“teltta=テント”、「ヌースカムイックセン テルッタ」です。

ムーミンバレーパーク内には、わかりやすくムーミン谷の仲間たちが登場する場所もありますが、四季折々の自然の中で、ムーミン谷の仲間たちや、小さな生きものたちの気配のようなものを感じられる場所であるというのが、「ムーミンバレーパーク」らしさであるとも言えます。

おさびし山エリアのひときわ奥の入り江にある「スナフキンのテント」は、自然の中でいつも変わらず静かに佇んでいます。
私たちの生活を変えてしまったウイルスが出てくるまでは、ときどき、スナフキンが訪れることもありました。
(今はどこかに出かけてしまっているのでしょうね)

 

「スナフキンのテント」と「ヘムレンさんの遊園地」をつなぐ“ハーモニカの小径”

パーク内には、いくつかの名前のある道があります。そのうちの1つが、「ハーモニカの小径(こみち)」です。
名前の由来は、もちろんスナフキンの持つ楽器であるハーモニカ。
「ハーモニカの小径」のフィンランド語「Huuliharppu polku(フーリハルップ ポルク)」と書かれた小さなサインが目印のこの道は、「スナフキンのテント」と「ヘムレンさんの遊園地」を繋ぐ道。「ヘムレンさんの遊園地」からは、「スナフキンのテント」へのゲートウェイとして、また、「スナフキンのテント」からは、スナフキンの余韻を感じていただきつつ「ヘムレンさんの遊園地」への近道となるような、どちらから行ってもスナフキンの気配を感じられる名前にしました。

 

なにもないのか、あると思うのか 答えは人それぞれ

スナフキンのテントは、孤独を愛し、自然の音から曲づくりの着想を得るスナフキンのとっておきの居場所を再現できるよう、いちばん人気(ひとけ)がない遠くの場所にひっそりとあり、そこは鳥のさえずりや木がそよぐ音が聴こえるとっても素敵な場所なので、意図的にその場所へ向かう道の途中からBGMをなくし、自然の音のみにしています。

ところがこの場所、人によっては、行ったら、なにもなかった。(テントしかなかった)
ただ歩かされて、疲れた、というコメントを一部の日本人のゲストからいただくこともあるということも聞きます。

ムーミンの作者の生まれ故郷のフィンランドの人々も多くパークに訪れているのですが、そのたびに、ここは「本当に、スナフキンらしい場所だね」と言います。「フィンランドよりも、ここはムーミン谷らしいね。」とも。

享受や過剰なサービスに慣れていて、「なにかあるのが当たり前」の、今の日本の環境では、質素なスナフキンの好む静寂を感じていただくことや、スナフキンの気持ちになってみて孤独を愉しむこと、は、人によっては難しいものなのでしょうか。

静かな、木漏れ日が差し込む心地よい木々につつまれた環境で、小鳥や葉のさえずりを聴きながら、少し日常の喧騒を忘れられた。スナフキンの創作活動はこういう場所から着想を得ているのだなと気づいた。ベンチにあったスナフキンの言葉に、はっとさせられた。
木陰を散歩して気持ちよかった。
…それは、「なにもない」場所なのでしょうか?
少なくとも、スナフキンにとっては、作曲の着想があふれる「たくさんある」場所なのだと思います。

そもそも、すべての場所にいつでも目に見えて「なにかなければいけないのか?」というのもポイントです。
静かに時を過ごして自分と向き合うような禅寺でなにか激しい音楽であったりイベント発生を期待することは、おそらくほぼないと思います。
でもこの場所は、耳を澄ませると聴こえてくる音、頬をなでる風、季節の匂い、陽射しの強弱、訪れる生きものなども、天気や、訪れる時間、そして時期によっていつも違います。

もちろん、「スナフキン」というのがどんな環境を好むのか知らない方々もいるのかもしれません。(孤独を愛し、一人で静かに創作活動をするのが喜び、命令や禁止されるのが嫌い、など)

それでは、

この先には、「スナフキンのテント」があります。
「スナフキンのテント」以外は、なにもないです。
曲づくりをするスナフキンの着想となる自然の中で、
木々の音、小鳥のさえずりを聴きながら、
スナフキンが好む静寂を感じられたい方のみ
どうぞお進みください。

という「あるのにない」と書かれたとんち問答のような看板を置けばよいのでしょうか?
指示されることや、看板が大嫌いなスナフキンの場所に?
…それもなんだか皮肉めいているようにも思います。

とはいえ、できるだけ多くの方々に愛される場所であるというのが、大切なことだと思います。もし、これを読まれたみなさまの中で、スナフキンにとってとても大事な世界観を損なわずに、そして、今のご時世でスナフキンとゲストのみなさんが積極的な接触をせずに、ここになにもなくてつまらないという一部の方々にも満足いただけるような、ご意見やアイデアがあるようでしたら、ぜひ、この記事を紹介している各SNSに、コメントしていただければと思います。もちろん、なにも手を加えず、今のままでよい、というスナフキンの大切な居場所を守っていただけるコメントも大歓迎です。
(今後の参考とさせていただきます。)

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株式会社ムーミン物語
川崎 亜利沙
(text by Arisa Kawasaki, Moomin Monogatari ltd.)