新連載【0】Prologue はじめに

いま、私たちの世界は未曽有の感染症に席巻されています。

それに比べて、ムーミン谷は平和でのどか・・・と思いきや、実はムーミンたちの世界もそれなりに大変なんです。大洪水で家が流され、家族がはぐれてしまったり、かと思うと地球に彗星が迫ってきて、海が干上がってしまったり。そうでなくても、毎年冬にはすっかり雪に閉ざれ、家の中でやり過ごすしかないのです。

でもムーミンたちは、そんな状況でもなにかしら楽しみを見つけて、歌を歌ったり、ダンスを踊ったり、おいしいパンケーキを作って食べたり、なんだかのんきに過ごしています(冬は冬眠してしまうんですけどね)。

「たのしくすごすって、ほんとにわけのないことよ」(小説『ムーミン谷の11月』より)と、ミムラねえさんも言っていましたね。

今の私たちからは、ちょっとうらやましくもあるムーミンたちのこのマインド。根底にあるのは、想像力ではないでしょうか。何もなくても、楽しいことを想像することははできますからね。そして想像することは、創造の初めの一歩。ものを作り出すには、欠かせない過程なのです。

ムーミンの物語を追体験できるムーミンバレーパークそんな風にして創りあげたものです。

もちろんベースにはトーベ・ヤンソンのムーミン作品があり、私たちは、可能な限りそれに忠実なものを作ろうとしました。でも、トーベの絵と文章に、すべてが書かれているわけではありません(それに、本当を言うと、書くたびに違っていたりもするので、これがまた困ってしまうんです!)。そんな時に頼りにするのは、想像力しかありません。こうなんじゃないか、ああなんじゃないかと、せいいっぱい想像の翼を広げて、それを一つ一つ形作ったり、塗ったり、買い集めたり。そうやってできたのがムーミンバレーパークなんです。

もちろんテーマパークは、何の予備知識もなく訪れた方にも楽しんでいただけるものでなければなりません。言い換えれば、出来上がったものがすべて。それを作る過程は、言ってみれば「裏側」にすぎません。

でもムーミンバレーパークは、新しい時代のテーマパーク、テーマパーク2.0として、今までどのテーマパークも見せてこなかった建設の様子をドローンで撮影してYouTubeにアップしたり、コンセプトをnoteに掲載してみたりと、SNSを通して制作の過程や背景をご紹介してきました。今の時代、知識やノウハウを独占するのではなく、シェアしていくことでまた新たな価値が生まれています。それは、玄関のドアに鍵がかかっておらず誰でも受け入れるムーミン屋敷にも通じる?なんて思ったのです。

でも、まだまだお伝えできていないことがたくさん!特に、パークとトーベの作品のつながりは、もっともっとお伝えしたいと思っています。そこでこのたび、ムーミン公式サイトのブログという、ムーミンの大のファンのみなさまが集まる場所をお借りして、ムーミンバレーパークの施設やデザイン一つ一つの「裏側」、トーベの作品とのつながりと、それを形にするための想像と創造にまつわる過程やコンセプトなどをご紹介することにいたしました。

 

たくさんのクリエイティブを生み出したトーベの裏側(背中)を鏡越しに見る

 

次回から、そんなパークのちょっとディープな情報を、AからZまでのキーワードにして、アルファベット順にご紹介していきたいと思います。題してムーミンバレーパークのA to Z

次にパークを訪れていただいたとき、いつもとはちょっと違う視点からも楽しんでいただけることを願って・・・。よろしくお付き合いのほど、どうぞよろしくお願いいたします。

 

【Introduction movie】

今回、クリエイティブの裏側の紹介のはじまりのスピンオフ素材として選んだのは、ムーミンの物語が生まれた国フィンランドでコンテンツを管理するMoomin Characters社が2018年に作成した公式の動画です。パークができるまで、メールはもちろん、何回もフィンランドに行ったり、日本に来てもらったりしてたくさんのやりとりを重ねてきました。この動画も、今となっては貴重なアーカイブです。

約3分間の動画には、パークが完成する前の空撮や、フィンランドでのミーティング、フィンランドの蚤の市やセカンドハンズに訪れて、実際にムーミン屋敷に飾られている装飾品の買い付けをしている様子が登場します。

動画の中には、トーベの姪であり、Moomin Characters社のクリエイティブ・ディレクターであるソフィア・ヤンソンさんから「ムーミンバレーパークに関わる人たちは、作者トーベに敬意を払いながら、オリジナルの原作に基づき、とても細かいディテールにこだわって制作をしてくれている―そしてそれはムーミンのことを好きなファンの方々に喜んでもらえるものと確信している。」というコメントがありました。

 

―――――――

株式会社ムーミン物語

川崎 亜利沙