いたずらスティンキーと「トリック・オア・トリート!」

10月に入ると街のあちこちで目にするハロウィン(ハロウィーン)のディスプレイや関連商品。お子さんのいるご家庭やパーティー好きの方は、今年はどんな仮装をするか、楽しく準備を進めていらっしゃることでしょう。ムーミンバレーパークでも11月24日まで「ムーミンバレーパークのハーベスト(秋の収穫祭)」と銘打ったイベントを開催中! ムーミンの物語に登場するキャラクターのコスプレで遊びに行くと、オリジナルグッズプレゼントほか、さまざまな特典が用意されていますよ!

さて、ハロウィンはもともと秋の収穫を祝い、悪霊を祓う古代ケルトのお祭り。では、ムーミンのお話にハロウィンは登場するのでしょうかクリスマスすら知らなかったムーミンたち、どうやらハロウィンを楽しむ習慣はなかったようです。
昨今のアメリカなどでは子どもたちが仮装をして家々を訪ね、「Trick or treat!」(いたずらか、お菓子か)」の合い言葉でお菓子をもらってまわります。ムーミン谷でいたずらが得意なキャラクターといえば、なんといってもスティンキー!  真っ白で柔らかそうなムーミンたちに対して、真っ黒でモジャモジャな姿も、ちょっとホラーなハロウィンのイメージにぴったりです。

懐かしいアニメやグッズでも人気のスティンキーですが、ムーミンの登場人物のなかで、ちょっと特殊な存在なんです。というのも、スティンキーは原作小説には登場せず、コミックスだけに出てくるキャラクター。最初に発表されたコミックス第1話『ひとりぼっちのムーミン』(筑摩書房/冨原眞弓訳)で、驚きのデビューを果たします。ムーミンやしきにひとりぼっちで暮らすムーミントロール。いっぺんに15人も友だちや親戚を招待してしまい、自分のベッドまで占領され、おもてなしにてんてこまい。友だちのスニフはみんなを追い出せばいいとアドバイスしますが、感じが悪いと思われたくないムーミントロールがためらっているうちに、さらにニョロニョロの大群まで押し寄せてきます。なんとか自発的に帰ってもらおうと、煙突から水を撒いたり、おたふく風邪にかかったフリをしたり、いろいろな策を講じますが、効果ゼロ。そこで、ムーミントロールが思いついたのは、ものすごい悪臭を放つスティンキーを招待すること。もくろみどおり、お客さんたちはあまりの臭さに耐えきれず、いっせいに逃げ出していきました。静かな暮らしが戻ってきた!と思ったのも束の間、今度はなんとスティンキーがムーミンやしきや家具を食べ始めてしまいました。住むところをなくしたムーミントロールはスニフと新しい家を探すことに……。

コミックス第1話から、小説とはまったく異なる設定にびっくり! ご覧のとおり、ムーミンの姿もちょっとふっくらしていますね。このエピソードにはスナフキンスノークのおじょうさんなど、おなじみの仲間たちが次々と顔を出しますが、ムーミンパパムーミンママは出てきません(その衝撃の理由は第2話で明かされますから、ご興味のある方はぜひ読んでみてください)。スティンキーの出番は冒頭だけにもかかわらず、人々が逃げ出すほどの悪臭だわ、家を食べてしまうわ、なかなかのインパクトです。なにしろ、スティンキーという名前は英語で“臭いヤツ”というような意味で、スウェーデン語でもフィンランド語でも同じニュアンスの名前で呼ばれています。

スティンキーがしでかしたいたずらの代表例のひとつは、「ジャングルになったムーミン谷」で動物園の檻を開けて、動物たちを外に出してしまったこと! そのときの騒動はムーミンクイズ「ムーミンはカバじゃない! じゃあ何?」でもご紹介しています。第5話「やっかいな冬」では、ムーミンたちが秘密にしておこうと思ったことをバラしてしまったり、余計なことを言ってまわったりして事態を混乱させます。他にスティンキーが活躍するエピソードは第8話「預言者あらわる」、 第13話「ムーミンママの小さなひみつ 」、第17話「彗星がふってくる日」など。ムーミンパパに密造酒づくりを勧めたり、ムーミンママをドロボー協会に引き入れようとしたり、サンオイルを魔法の水だと偽って売りさばいたり、ムーミン谷きってのトラブルメーカーといえます。また、悪党としての自分に誇りをもっているらしく、第53話「スニフ、心をいれかえる」には、自分の指名手配書の束を自慢げに披露する場面があります。それでも、愛嬌のある見た目と性格で、どことなく憎めないスティンキー。彼のいたずらは自分がおもしろいと思うことをやっているだけだったり、余計なお節介だったり、誰かを傷つけるような悪意のあるものではないところがいいですね(それでも十分、迷惑ではありますが)。
今年のハロウィンには、黒づくめでスティンキーのコスプレはいかがでしょう? でも、悪臭と何でも食べるのだけはどうかご勘弁を(笑)!

萩原まみ