ムーミンの日の楽しみ方【本国サイトのブログから】

毎年8月9日は、トーベ・ヤンソンの誕生日です。この日は、ムーミンファンたちが集って、トーベが創り出した世界をお祝いします。といってもムーミンの日は、そんなに大げさなものではないんですよ。自然の中を歩いたり、朝ごはんにパンケーキを食べたり、お気に入りのムーミンの本を読んだり……、そんな小さな喜びを大切にする日です。
「ムーミンの日」のはじまりと、ムーミンファンたちの恒例行事、そしてムーミンらしい一日の過ごし方とはどんなものなのか、ちょっと探ってみましょう!

ムーミンの日ってなに?

「ムーミンの日」は、ムーミンの最初の小説の出版60周年を記念して、2005年に日本で始まったものです。日本でムーミンは高い人気を誇っています。1960年代に小説が初めて日本語に翻訳され、その後2つのアニメーションが日本で制作されました。

ムーミンの日は、ムーミントロールの誕生日ではありません(ムーミントロールの年齢は謎なんです!)。また、ムーミンの記念日というわけでもありません。1945年の『小さなトロールと大きな大洪水』の正確な出版日を特定するのは難しかったので、トーベ・ヤンソンの誕生日の8月9日が「ムーミンの日」に選ばれたのでした。

それ以来日本では、この日を記念して、毎年恒例の「ムーミンの日」のイベントや、各地で期間限定の催事が開催されています。フィンランドやそのほかの国々では、今や「ムーミンの日」のシンボルとなったムーミンマグをはじめとする限定商品が記念に発売されることが多いです。でも、何よりも大切なのは、ムーミンの物語、そしてトーベが作品に注いだ創造力や、勇気や愛などの価値観を称える日ということなんですよね。

 

「起きぬけざま、お日さまがのぼるときに、波の中でおどりはねるって、なんと幸福なことでしょう。」

『たのしいムーミン一家』(1948年、山室静訳、講談社)より

 

世界中のムーミンの日

ムーミン一家と同じように、ムーミンのファンたちは楽しいことが大好きで、ムーミン愛に溢れ、美しいものを生み出すことができる人々です。毎年お気に入りのムーミンの本を読み返す人もいれば、Instagramでムーミンのファンアートをシェアしたり、ニョロニョロ型のクッキーを焼いたり、自分のムーミンハウスを作ったりする人たちがいます。中にはノープランで過ごす人たちもいて、でもそれが一番ムーミンらしいお祝いのしかたかもしれませんね!

「ちょっと立ち止まって、人生の奇妙で素晴らしいことすべてを楽しむ」

ネット上ではフィンランドはじめ世界中で、ファンたちがムーミンの名言やアート、そして自分だけの特別なお祝いを投稿しています。実際にファンの人たちが楽しんでいるムーミンの日の過ごし方をご紹介しましょう。

「ムーミンのサントラを聴く」

「自然の中で、たとえば浜辺でおいしいものを食べる」

「ムーミンシリーズをランダムに一気見する」

「いつもより楽しく、優しく、クリエイティブになる!」

「みんなでムーミンのキャラクターのコスプレをして、お茶会を開く」

「今スウェーデン語を勉強中。パンケーキを食べながらスウェーデン語で最初の本を読んでみようと思う」

「ムーミンにインスピレーションを受けた、温かくて心安らぐスタイルで絵を描く」

 

パンケーキから星の観察まで:ムーミンらしい一日を過ごしてみよう

「ムーミンの日」のお祝いのしかたは一つではありません。まさにそれがムーミンらしい一日の過ごし方なのです。もしどんなことをしたらいいのかアイディアを探しているなら、こんな「ムーミンらしい一日」はいかがですか?

 

もし、ムーミンのキャラクターがあなたの一日をプロデュースしてくれたなら?

ムーミントロールの場合:発見の一日

おいしい朝ごはん(たとえば、ジャムをのせたパンケーキ)から、一日をスタートしましょう。それから冒険に出かけましょう。危険すぎる冒険ではなくて、あなたにとって新しい何かに出会える旅へ。ちょっと道に迷ったり、新しい友だちを作ったり、思いつきで泳いでみたり。一日の終わりにはブランケットにくるまって、夜食を食べながら、お気に入りの物語を読むなんてどうでしょう?

「このことについては、明日考えるとしよう。今はもっと大切なことで、心がいっぱいなんだもの」
ムーミントロール『ムーミンパパ海へいく』(1965年、小野寺百合子訳、講談社)

 

スナフキンの場合:一人でいる日

早起きして、朝ごはんをカバンに詰め込みましょう(シンプルだけど満足できるものをね)。森の中、野原、川辺など、自然の中に散歩に出かけましょう。メッセージはチェックしないでくださいね。その代わりに小さいテントを張ったり、好きな楽器を演奏したり、ノートに何か書き留めたり、またはじっと座っているだけというのもありでしょうか。気が向いたら、特に計画は立てないで、すぐに行動しましょう。

「大切なのは、自分のしたいことがなにかを、わかってるってことだよ」
スナフキン『ムーミン谷の夏まつり』(1954年、下村隆一訳、講談社)

 

ムーミンママの場合:安らぎの一日

起きたら、朝ごはんにオーブンでパンやお菓子を焼いてみましょう。ガーデニングをして貝がらで花壇を飾ったり、絵を描いてみたり、家族や友だちをお茶に招いても素敵です(みんなに泊まっていってもらうように提案してみてくださいね)。片付けだって、気が向かなかったらいつでも止めちゃっていいんです。外が雨だったら、それで食器も洗えるかも!?一日の終わりには、みんなにブランケットを用意してあげましょうね。

「気持ちのいいものは、なんだっておなかにもいいのよ」
ムーミンママ『ムーミンパパの思い出』(1950年、小野寺百合子訳、講談社)より

 

リトルミイの場合:いたずらざんまいの一日

思いっきり寝坊するとか早起きするとか、どちらでもやりたいことを思いっきりやってみましょう!朝ごはんの前に大胆なひと言を発してみましょう(意味があるものでなくてもいいんです)。それから友だちを何か手伝ってあげましょう。でも、自分の手柄にしてはいけませんよ。大声で笑ってみて。そして自分の考えを明かしたりはしません。ちょっと変わった場所で昼寝をしてみるのはどうでしょう?(でも、ミイのようにティーポットには入らないかもしれませんね!)

「いつも希望を胸に生きるって、いいことよね」
ちびのミイ『ムーミン谷の仲間たち』(1962年、山室静訳、講談社)より

 

ムーミンパパの場合:大いなる計画の一日

朝は、自分の若い頃の思い出をドラマチックに語ることからはじめてみましょう(誰かが聞いていてもいいし、いなくたっていいんです)。または、ツリーハウスや船、あるいはまったく新しい社会秩序というような野心的なプロジェクトに、腰を据えて取り組むのもいいですね。一日を通して、考えを書き留めてみましょう。(できればハンモックで)昼寝して、それから夜は星空を眺めて過ごしましょう。

「順序正しく始めるということは、本が第一行から始まるのと同じように、大切なことだからね。万事がそれで決まるんだよ」
ムーミンパパ『ムーミンパパ 海へ行く』(1965年、小野寺百合子訳、講談社)より

 

スニフの場合:大きな夢を抱く一日

たっぷりの朝ごはんと、野心的なアイデア――宝探しをしたり、お金持ちになること、あるいは誰も思いつかなかった何かを発明すること――を持って一日をはじめてみましょう。とにかく兄弟や友だちと一緒に過ごしてみましょう。珍しいものにお金を使うのは我慢しましょうね(結局、使ってしまうんですけどね)。心配は少しだけにして、たくさんおやつを食べましょう。

「ぼくは小さい冒険が好きなんだ。ちょうどいい大きさの冒険がさ」 
スニフ『ムーミン谷の彗星』(1946年版)より

 

そのほかのアイデア:心を満たす、ささやかなひととき
❤️好きな人と一日を過ごす
🥞ムーミンママのパンケーキを作る
🥳パーティーを開く
📚本を読む
✏️本を書く
🎶歌を歌う
🌊しばらく海を眺めてみよう
🧹お掃除タイムも楽しく
🥒何かを漬ける
💥ムーミン流に悪態をつく
💤たっぷりお昼寝する
🪩一晩中踊り明かす
💭人生の意味について考えてみる
🇫🇮(フィンランドの)国旗を掲げる!(トーベ・ヤンソンの誕生日はフィンランドで国旗を掲げる日として推奨されています)
✨喜びをもたらしてくれるものに身を委ねる

ムーミンの日の過ごし方に、正解はありません。ムーミン谷にはルールがないんですから(ただし、思いやりを持つことは忘れてはいけません!)。あなたが正しいものと感じる何か――やさしくて、ワイルドで、寛大で、想像力豊かな何か――のためにちょっと立ち止まる、そんな日なのです。

どんなふうにお祝いするかはあなたの自由です。でも、思い出させてくれるのは――いちばん優しい物語こそ、いちばん勇気ある物語になれるということ。そして、ときには(いつもじゃなくても)、いちばんいい日というのは、あれこれ多くを望まない日なのだということなんですよね。

「ねえ、ぼうや、好きなようにしたらいい!」
ヘムルたち『ムーミン谷のなかまたち』(1962年、山室静訳、講談社)

あなたにとって理想の「ムーミンの日」の過ごし方はどんなですか?来年のムーミンの日には、Instagramでムーミンファンに加わって、あなたの「#ムーミンの日 #moominsday」をぜひシェアしてみてくださいね!

翻訳/内山さつき