
(214)夏の計画、フィンランドでムーミンを満喫する【フィンランドムーミン便り】
洋ナシとりんご味のジュース(1リットル)はパックごとテーブルに出したい
5月にも雪は降る。でも、新じゃがが高く売れるのは夏至祭のときだから、農家は耕した畑に5月の頭には種芋を植える。一方で夏至祭に照準を合わせなくて済む私たちが呑気に何を植えようかと盛り上がるのがこの時期。最近の人気はトマトだ。サマーハウスに長く滞在する人たちなら、野菜の他に庭を彩る花々にも余念がない。
トーベ・ヤンソンが最後に選んだ夏の島は岩礁にも近い島で、植物はほとんどない。とはいえ、トーベがいた頃は、もっと草花があったという。ムーミンママは一家で新天地に向かうときにバラを手にした。移り住んだ灯台の島にも庭を作ろうとしたのだけれど、その島の土壌で庭を作ることは叶わず、その様子はどことなく、トーベが最後の夏の島でやったことを彷彿とさせた。
今年は学校の夏休みが6月1日から始まるフィンランド。多くの人が夏休みの多くの時間をサマーハウスで過ごすとして、それ以外の何か特別なこともしたいよねと考える。この時期に「そうだトーベが30近くの夏を過ごした最後の島、クルーヴハルに行ってみたい!」と思っても、一般公開が1週間と限られているとボートを出してくれる人を確保することもままならない。多くのアーティストがいつか行ってみたいと言いながら、なかなか叶わないのもクルーヴハルだ。しかも風が強いなど天候による条件が合わないと上陸できないリスクもある。カヤックで上陸した人たちがいると聞けば、いつかそんな風に行ってみたいと思いつつ、年齢と体力を考えると急がなければと少し焦る。ちなみに今年の一般公開時期は7月21日(月)〜27日(日)。時間は12時〜18時、今年は小屋に入る際には入場料が10ユーロ(維持費に充てるそう)とのこと。
クルーヴハルの一般公開は7月。6月なら10日開園のムーミンワールドもいい。フィリフヨンカさんと一緒に掃除したり、夏至祭の時だけのムーミン一家やムーミン谷の仲間たちと一緒に歌ったり踊ったりする特別なイベントもある。6月20、21日にフィンランドにいることがあれば、ムーミンワールドでムーミンらしい夏至祭のお祝いをするのも楽しそう。ムーミン美術館では6月7日からムーミン80周年を記念して『ムーミンやしきへようこそ!』という企画展が始まる。また6月にはヘルシンキからバスで1時間ほどのカルッキラにある映画監督アキ・カウリスマキの映画館としても知られるキノ・ライカとムーミンのコラボベント予定されており、写真展をはじめ期間限定ショップや映画の上映やコンサートなどが開催されるとか。4月の終わりからヘルシンキ美術館HAMではトーベ・ヤンソンが手がけた常設のフレスコ画2点のほか、1984年に完成した保育園のために描かれた夏、春、秋というムーミン谷の仲間たちが大勢描かれた三連画や保育園のあちこちに飾られていたトーベの手描き画やパートナーのトゥーリッキ・ピエティラの作品も展示されている。同じくヘルシンキではストックマンデパート8階で「ストックマンでのムーミントロール」と題したストックマンデパートとムーミンの歴史を紹介する展覧会を8月31日まで開催している。2月から始まったコトカという町にある海洋博物館でのムーミン展はコロナ禍で日本の人が訪れることが難しかった国立博物館での展覧会『勇気、愛、自由』から構成されている。
さて、夏の計画などと呑気なことを言っていたら、90年代のムーミンアニメの音楽で構成されたコンサートのチケットが、あっという間に完売していた。おそらく90年代にムーミンアニメで育った人たちの情熱が争奪戦を引き起こしたのだろうと思う。今でもムーミンアニメのセリフを覚えている人たちなのだ。そんなことを考えるとチケットが取れなかったことよりも、彼らを育んできた大切な音楽をコンサートで聴いた後の感想を聞くのが今から楽しみだ。
ひとまずこの夏は、ここで紹介したところには全て行けたらいいなと思う。
夏になればムーミンワールドもオープンする
森下圭子