ムーミンのように生きる――人生のささやかなことを楽しむ6つの方法【本国サイトのブログから】

トーベ・ヤンソンの物語は、私たちに大切なことを教えてくれます。物語の中で描かれる冒険や、予期しない出来事は、私たちを勇気づけてくれ、再び立ち上がるように励ましてくれます。でも一方で、平凡な毎日の中に幸せを見つけることが、ムーミンたちの最も得意なことでもあるのです。
冒険が大好きなムーミンたちですが、ムーミンだって人生がいつも冒険だというわけではありません。大切なのは、日々のささやかな瞬間を大切にし、今あるものに感謝すること。哲学的な登場人物が登場したり、細やかな自然やお祝いの気持ちの大切さが描かれるなど、ムーミンの物語には、日常を魔法のように変えるヒントがたくさん詰まっています。
ムーミンたちのように生きるにはどうしたらいいのでしょう? 人生のささやかなことを楽しむ6つの方法をご紹介しましょう。

1. 自然を感じる

寒い冬が花の咲き乱れる春に変わっていく様子や、ムーミンママのとっておきの季節のおやつなど、ムーミンの物語にはいつも自然への深い親しみがあふれています。
その多くは、トーベ・ヤンソンの故郷であるフィンランドの自然の影響を受けています。外で過ごし、自然に感謝することは、北欧の生活では大切な要素なのです。

ああ、森や海や、雨や風、そして太陽の光や草やコケ、ぼくはどれも好きでたまらないのに。もしもみんななくなってしまったら、ぼくはとても生きていけないな
――ムーミントロール

『ムーミンの谷の彗星』(トーベ・ヤンソン/作 下村隆一/訳 講談社)より

『ムーミン谷の冬』(1957年)でムーミントロールが気づいたように、厳しい冬でさえも美しいものに変わります。寒さはもちろん恐ろしく、不便なものではありますが、きらきらと輝く雪の結晶や家に灯るろうそくの光に漂う静けさには、魔法のような美しさがあるのです。

これが冬か! これなら、冬だって好きになれるぞ
――ムーミントロール

『ムーミンの谷の冬』(トーベ・ヤンソン/作 山室静/訳 講談社)より

ムーミンたちは自然に畏敬の念を抱いて暮らしています。彼らは自然を家族の一員のように愛し、そして自分がその一部であると感じています。それが私たちはムーミンの物語から学べる、1つめの人生の秘訣です。

ゆううつな日は雨だれの音に耳を澄ましてほっとしたり、露の下りた草の中に入って足を濡らしてみたり、早起きして美しい日の出を楽しんだりしましょう。時間がないときは、少し外を散歩するだけでもいいのです。人生のささやかなことを楽しむのなら、自然は無限のインスピレーションの源です!

2. 愛する人たちとの時間を大切に

ムーミン谷には、さまざまな友情や家族の形があります。こうあるべきだという決まりはなく、みんなが、自分が仲間の中にいて、尊重されていると感じられればそれでいいのです。分かち合うことから得られる喜びが、ムーミンの物語の中心には描かれています。
ムーミンママは、みんなが心地よくしていられるよう、どんな人にも心遣いを忘れないキャラクターです。でも、他者を思いやっているのはムーミンママだけではありません。 スナフキンとムーミンは特別な絆で結ばれているし、ムーミンとスノークのおじょうさんも同じです。リトルミイは、毒舌でいたずら好きですが、率直で裏切ったりしない友だちです。ムーミン谷の悪役であるスティンキーでさえ、ムーミンやしきではいつもあたたかく迎え入れられているのです。
ムーミン谷に登場する個性豊かなキャラクターは枚挙にいとまがありませんが、ひとつだけ確かなことは、自分一人だけでする冒険は存在しないということです。ムーミンと仲間たちは共に過ごす時間を大切にし、何か困難なことが起こったときは、一緒に解決するのが当然のことなのです。

わたしに初めての友だちができたということです。これから本当の意味でわたしの人生が始まるのです。
――ムーミンパパ『ムーミンパパの思い出』

(トーベ・ヤンソン/作 小野寺百合子/訳 講談社)より

大好きな友だちとコーヒーを飲みながら心の通い合った会話をしたり、わくわくする仲間たちと旅をしたり、家族でゲームをしながら夜を過ごしたり――、愛する人たちと分かち合うひとときを大切にしましょう。何気ないひとときが一番思い出に残ることも多いものです。沈黙を分かち合うことにも、人生の宝石のような瞬間が潜んでいるのです。

3. 日常の中に喜びをつくり出す

ムーミンの物語では、彗星が迫ってきたり、洪水が起こったり、ルビーが行方不明になってしまったりと、さまざまな出来事が起こります。しかし、同時においしい食事や、楽しいピクニックの計画、礼を尽くすこと、夏を楽しむことなども大切なこととして描かれているのです。

気持ちのいいものは、なんだっておなかにもいいのよ
――ムーミンママ『ムーミンパパの思い出』

(トーベ・ヤンソン/作 小野寺百合子/訳 講談社)より

朝のコーヒーの香りを楽しんだり、ハンモックに横たわって鳥のさえずりに気がついたり、読書に夢中になったりすることは、日常を楽しむ方法のほんの一例です。そして、何も起きないなと感じたら、自分で何か企画してみましょう。
ムーミン一家はお祝いするのが、特にささやかな瞬間を特別なものにするのが得意です。『たのしいムーミン一家』(1948年)の最後に開かれるパーティーは、野外パーティーの完璧な姿でしょう。でも、どのムーミンの物語にも、パンケーキでお祝いしたり、夏のピクニック、外でゲームしたりすることなどが、さりげなく描かれているんですよ。
ムーミンのように、人生のささやかなことに感謝するための3つ目の秘訣は、喜びは特別な日だけにあるのではないのを知ること。今夜自分自身のために食事をつくるときには、料理の色や食感、味覚をよく味わってみましょう。または、どんなに小さなことでも、今度良いことがあったらケーキを買って、お友だちを招待してみましょう!

4. 前向きで遊び心のある考え方を培おう

ムーミンの物語は、どんな状況であってもシンプルなことにこそ価値があり、自分自身の態度次第で、ついていない日も良い方に変えられるという信念に基づいて作られています。
今この瞬間を受け入れて、できることをしましょう。それ以外はそのままにするしかないのです。ムーミン谷では、障害となるものが冒険に変わり、パンくずはいつも、ごちそうになりうるのです。

わけのわからないことだらけね。でも本当は、なんでもいつもと同じようにあると思うほうが、おかしいのかもしれないわ
――ムーミンママ『ムーミン谷の夏まつり』

(トーベ・ヤンソン/作 下村隆一/訳 講談社)より

遊び心は子どもたちだけのものではありません。ムーミン一家では、前向きで遊び心のある考え方を持つことが、人生の紆余曲折を乗り越えるやり方なのです。
遊び心とユーモアは、新しいドレスの上にコーヒーをこぼしてしまったときや、面接がうまくいかなかったとき、わくわくするような予定がキャンセルになってしまったりしたときに、大きな武器となります。日々の瞬間にちょっとした喜びをもたらすためには、特に逆境に陥ったときにも大笑いすることをためらわないでください。そして、常に今あるものに感謝しましょう。

5. 自分だけの心地のいい空間を作ろう

ムーミンやしきは、ムーミン谷のみんなにとって、安らぎと安全を与えてくれる大切な場所です。どんな冒険の旅に出かけても、家に帰ればいつもほっとできるのです。
ムーミンたちが共にいる時間を大切にしているのと同じように、必要なときには自分のための小さな居場所があることも大切です。ムーミンパパは屋根裏部屋で思い出にふけるのが好きだし、ムーミントロールには自分の部屋があります。リトルミイはいつも小物の中で寝ています。そしてスナフキンはどこへ行っても、自分のテントで眠るのです。

自分の空間の大切さも、ムーミンの物語から得られるもののひとつです。家とはとても個人的なもので、自分のものになったとき真価を発揮します。さまざまなインテリアに挑戦してみたり、読書コーナーを作ったり、部屋にいい香りを漂わせてみたり、日々の瞑想のために心地のいい肘掛け椅子を置いたり、自分にとって快適な空間を作る方法を見つけてみましょう。
ムーミンやしきが安心できる場所なのは、その中に愛があるからです。ムーミンやしきでは、すべての人がお客さまなのです。

6. 人生の意味を考えてみよう

ムーミンの物語には深いメッセージがたくさん込められています。例えば、『ムーミンパパ海へいく』(1965年)は、自分の本質を見つける物語です。『ムーミンパパの思い出』(1950年)は勇気を持つことを教えてくれ、『ムーミン谷の十一月』(1970年)は変化と別れについての物語です。
何気ない出来事の中でも、ムーミンたちの会話はとても哲学的です。簡単な言葉のやりとりの中に、自分自身を知り、何が喜びや悲しみをもたらすのかを理解することの大切さが描かれています。平凡な会話で始まっても、行間から自分自身を見つめることの大切さや、一人での時間の過ごし方を教えてくれるのです。

大切なのは、自分のしたいことがなにかを、わかってるってことだよ
――スナフキン『ムーミン谷の夏まつり』

(トーベ・ヤンソン/作 下村隆一/訳 講談社)より

ムーミン谷では、お祝いや共に過ごす時間のほかに、孤独を楽しむことも大切にしています。自分自身と向き合う静かな時間から得られるものは多いのです。それが6つ目のムーミンたちから学ぶ人生の秘訣です。
目まぐるしい毎日の中で、自分自身について考える時間を持ちましょう。自分にとって何が重要なのかを考えてみましょう。自分探しの旅をしてみましょう。ムーミンたちは毎日、自分の価値観に従って生きていますが、あなたはどうですか?

「歌を作るのにもってこいの晩だぞ」
こう、スナフキンは思いました。あたらしい歌――最初の部分はあこがれ、つぎの二つの部分は春のものがなしさ、あとは気ままにぶらついて、ひとりでいられるという大きなよろこびです。
『ムーミン谷の仲間たち』

(トーベ・ヤンソン/作 山室静/訳 講談社)より

ムーミンの物語は、シンプルなことの中に喜びを見つけるということを教えてくれます。大冒険だけでなく、平凡な日常にこそ人生の魅力があることに気づかせてくれるのです。「ムーミンの哲学」を取り入れることで、きっと人生の美しさを発見することができるでしょう。身近にある自然を受け入れ、愛する人たちを大切にし、日々のすることに喜びを生み出し、自分のための居心地の良い空間を作る――そして、自分自身を見つめる時間を持つのです。

ムーミンたちのように、人生のささやかなことを楽しみましょう!


翻訳/内山さつき