(104)ムーミン遊びあれこれ
ヘムレンさんに災難はつきもの、ヘムレンさんはちょっとうざい、ヘムレンさんは収集好きとか、ヘムレンさんっぽさを生かしながらその日の料理にヘムレンさんとの関わりを作ってお話にしてしまう。ムール貝を使ったときは、お腹を壊して担架で運ばれるヘムレンさんとそれを運ぶヘムレンさん、そしてそれを見届けるヘムレンさん…などなど。なんともバカバカしい遊びなのだけれど、これが楽しくて、つい笑いがとまらなくなる。
「大人が遊びというと語弊があるかもしれないから趣味って呼ぶことにしているの」といいながら、ムーミンの立体模型作りに夢中だったトーベ・ヤンソンとパートーナーのトゥーティたちを思い出す。彼女たちはおばあちゃんになっても、こうやって遊ぶことに夢中だった。自分なりのムーミンの楽しみかた、遊び方、それを作者本人が率先してやっていたと思うと、ヘムレンさん遊びだって個性があっていいじゃない?なんて思うのだ。勝手に背中を押された気分になってしまったりして。
遊び心という意味では、ムーミンの木製マグネットを作っているアプリルマイの代表もそう。ここのマグネットはフィンランドのムーミングッズの老舗の一つだけれど、今でも自宅の工房でマグネットを作っている。毎日ムーミンに囲まれてムーミンの仕事をして25年。でもムーミンに飽きたことはないという。自宅も工房になっている部屋も、よおく見てみると、試作品やムーミンで遊んだオブジェがあちこちにある。
もう10年以上前か、とある音楽コンクールの通訳をしていたときに、一人のフィンランド人識者が話していたことが印象に残っている。日本人の演奏は素晴らしいけれども、作曲家を敬い作曲者に対して忠実であろうということに留まってしまう。もっと自由に自分を出してくれたら。ムーミンと遊ぶ、夢中になって、これからもどんどんムーミンの世界を自分らしく遊ぼう。ヘムレンさん50体はまだまだ進化を続けそうだ。
森下圭子