家族のしるしの大パーティー

皆さんはパーティーといったら、どんなものを想像しますか? パーティー大好き、森番です。一言にパーティーと言っても、誕生日パーティー、ホームパーティー、引っ越しパーティーなど、色んな種類がありますし、それぞれの意味も全く異なりますね。ムーミン物語中でも、ムーミン一家を囲む、パーティーの場面が度々登場しています。しかし今回ご紹介する場面は、そんな他のパーティーとは一味違うのです。どう違うかというと、このパーティーはムーミン一家に会いたくてやってきた他人同士が、共同生活を通して「家族」となったことを祝うための、まさに「家族のしるし」としてのパーティーなのです。

『ムーミン谷の十一月』(鈴木徹郎訳)では、それぞれに悩みや事情を抱えたスナフキン、ホムサ、フィリフヨンカ、ヘムレン、スクルッタおじさん、ミムラが続々とムーミン谷へと集まってきます。しかし肝心のムーミン一家は旅に出かけていて不在。こうしてムーミン一家の帰りを心待ちにする者同士での、奇妙な共同生活が突然に始まります。そして様々な紆余曲折を経て、ついに皆で大パーティーを催すこととなるのです。

「このパーティーは、わたしたちみんなが、一つの家族であるしるしにもよおす。家族の夕べであります。」

ヘムレンさんは冒頭にそう挨拶すると、パーティーを祝して、一つの詩を朗読し始めます。
「しあわせとは、なんだろう—
日がくれて、自由になったひとときに、ずしりと手につたわるオールの重み
とうしんそうとあしをかきわけ、どろ沼からボートをこぎだし
うなばらにひろがる自由の値うちを知ることだ」

ヘムレンさんは、感激のあまり声を震わせながら、大声で詩を読みあげます。

「ああ、人生とはなんだろう
人生は、ひとときのゆめ、ふきあふれる、きみょうなあらしだ
道にまよえば、苦しみはひとしお、なすすべもなく、とほうにくれて
うき世の重みは、十重二重

ずしりと重たい 荷物のようだ
ああ こいしい
オールこぐ手に、ずしりとつたわる重みが
  十二月 ムーミン谷にて    ヘムレン」

ヘムレンさんの素敵な詩で始まった、大パーティー。つづけてホムサは本の朗読、スナフキンはハーモニカ演奏、ミムラは音楽に合わせたダンス、そしてフィリフヨンカは『ふるさとへ帰る』という題の「影絵」を、一人一人が余興として披露するのでした。

「ミムラねえさんの長い髪は、きらきらと、日の光がおどっているように見えました。なんて美しいんでしょう。なんて、たのしいのでしょう。」
「みんな、どっと、さけび声をあげました。
『ばんざい!ばんざい”!』」

こうしてムーミン一家がいない中でも、共に楽しいひと時を過ごすことのできた仲間たち。皆は上品におやすみの挨拶をし合うと、握手をし、あっという間にパーティー会場を後にするのでした。。。こうして皆がが引きあげてしまい、一人になったフィリフヨンカは、寂しさの中ひとりごとを言います。

「いいパーティーだったわ。」

そしてスナフキンがテーブルの上に置き忘れていったハーモニカで、何時間も音色を奏でるフィリフヨンカ。

「フィリフヨンカは、(中略)いっしんになってふいていました。心の中は、すっかりやすらかにおちついていました。」

実は今週でブログも最終回ということで、ムーミン一家不在の大パーティーについてご紹介しましたが、いかがでしたでしょうか? ムーミン一家に会いたくてムーミン谷へとやってきた仲間たち。しかしそこでの共同生活を通して、ムーミン一家に頼らなくても、各々が問題と向き合い自分なりの答えを見いだして、ようやく元の場所へと帰っていくのです。私たち読者にとっても「ムーミン谷」とは、まさにそういう存在なのかもしれません。そう考えると、私たちも「ムーミン谷」という場所において、一つの家族と言えるかもしれませんね。

そうね、家族っていい響きだわ。暫定的最終回を閉めさせていただきます。新金庫番です。
15年以上前に「バイヤー日記」として始まった、ムーミン公式サイト ブログ「ムーミン谷倉庫より」。これまでさまざまな倉庫のメンバーとともに、ムーミンを愛する皆さまに、ムーミンの商品情報、北欧やムーミン物語の魅力についてお伝えしてきました。ところが、ムーミンの世界は書けども書けども尽きることがありません。ムーミンの世界が大好きな人たちが素敵な商品を作り続け、そして、トーベ・ヤンソンの小説や漫画には、倉庫のスタッフですら人生経験を積んだ今でなければ、気づけなかった人生の機微にあふれたエピソードとともに、生き生きとしたムーミンと仲間たちが次々と姿を現すからです。
これからもみなさまには、ムーミン公式サイトを通して、そんなムーミンの世界に触れていただき、わくわくどきどきしていただけましたらありがたいです。

最後となりますが、長年にわたり、ご愛読いただきましてありがとうございました!それでは皆さん、いつかまたどこかでお会いしましょう~!
ありがとうございました~!