(158)花かんむりとトーベ

ここ最近は日常的な場面でも見られるようになった花かんむり。花かんむりを作るワークショップは、すぐに定員が埋まるくらいに人気が高い。これはムーミン展開催中の国立博物館で行われたワークショップ。

トーベ・ヤンソン生誕100年の8月9日、つまりトーベ・ヤンソンが生きていたら100歳を迎える誕生日に「花かんむりを作ろう」という企画があった。以来、トーベ・ヤンソンに関連して花かんむりが登場することが増えたように思う。現在開催中の国立博物館のムーミン展では、トーベ・ヤンソンが誕生日に頭にのせていた花かんむりも展示されている。

トーベ・ヤンソンが花冠をのせて泳いでいる写真はこれまで様々なところで紹介されているので、記憶にある人も少なくないのではと思う。でも、あれが造花で作られた花かんむりだと知ったのは、2013年、トーベ・ヤンソン生誕100年の前の年のことだった。

9月のある日、トーベ・ヤンソンが小さい頃から夏を過ごした家の船着き場で、私はなんとも滑稽なかたちで海に落ちた。そして海からでてきたずぶ濡れの姿を見て、目の前のグレータさんはひとしきり笑い、「うちで着替えていきなさいな」と声をかけてくれた。私はクルーヴハルで一泊した後だったこともあり、幸いパジャマを持っていた。フィンランドの9月は寒い。早いところ着替えたほうがいいのは明らかだった。

グレータさんのお宅。それはトーベが子どもの頃に夏を過ごした家であり、さらには『ムーミン谷の十一月』を執筆するために寝泊まりした家でもあった。グレータさん自身はもう体力的に2階へは行けないけれど行ってごらんと言ってもらい、ありがたくそうさせてもらった。すると、人形の頭に造花で作られた花かんむりがあるではないか。「え!これってトーベの?え!造花だったの?」…いろいろと疑問や知りたいことが頭を巡る。グレータさんがその時に教えてくれたのは、これはある時トーベの母ハムがプレゼントしてくれたものということだった。トーベにはグスタフション家に兄弟のように育った幼馴染がいた。その彼の元へ嫁いできたのがグレータさん。グレータさんの夫とトーベの誕生日が近いということで、ハムはそれぞれに花かんむりをプレゼントしたという。

その後、別のところから追加の情報が入ってきた。花かんむりは3つあって誕生日の近い3人がそれぞれハムにプレゼントされたという話もある。花かんむりを誕生日に頭にのせて過ごすのは、昔からやっていたことだということも聞いた。

最近ではトーベにちなんでとかトーベのお祝いいうと花かんむりがでてくる。先日も、性的マイノリティの人権を一緒に考えようというプライド・ウィークの行事のひとつとして、ムーミン展が開催されている国立博物館の庭で花かんむりを作るワークショップが行われた。テーブルには花かんむりをのせて微笑むトーベの写真が飾られていた。ムーミン展がはじまって一か月。いまだ毎日のように博物館前には入場の行列ができている。そして来週、いよいよ映画『TOVE(トーベ)』が公開される。

新しく出たムーミンクッキーは、少し前に発売されたアイスクリーム同様に甘さ控えめ。

森下圭子