(27)ムーミンがいてくれる

 

フィンランドの保育園はひとりになりたい子のための空間をうまく作っているなと思う。ひとりの時間を尊重して姿勢がうかがえると同時に、ひとりになる子への配慮もしてるんだ、いいな…と思った保育園もちらほら。それは「どんなときも傍にいてくれるお友達」を作ること。ぬいぐるみ、おもちゃ…ある保育園ではお母さんの手作りブランケットに、いつも自分の傍にいてくれるお友達、どんな時も味方でいてくれるお友達を縫い付けてあった。絵は子供たちが自分で描く。赤ちゃんの頃から大切にしているクマのぬいぐるみ、飼ってるウサギ、そんな中にムーミンもいた。

このまえ友人とお茶をしていたら、とつぜんムーミンの話になった。彼女の娘さんがまだ2歳になるかならないかくらいの時、パリで休暇を楽しんでいたときのこと。真夜中に「バタン!」とものすごい音がして、ふたり同時に目が覚めてしまったそうだ。「こわい」…まだ2歳になるかならないかの女の子が静かに淡々と言った。激しい音に淡々とした声で反応する小さな女の子というのが妙におかしかったらしいけれども、友人は母として、この小さな娘が「怖い」という言葉を知っていたということに、なによりも驚いたそうだ。彼女は私に「あれは絶対ムーミンのアニメーションだわ。それ以外に考えらられない。」と言葉を続けた。

この友人は話をしながら、自分の娘がムーミンを通じて、どれだけ基本的な感情を言葉で表現できる術を得たかと興奮気味に語ってくれた。アニメをみながら自分の中の漠然とした気持ちを言葉で表現できるということを知る、そうか…ムーミンは自分の気持ちがわかってくれる、ムーミンがそんな存在になっている子供たちがいるのかもしれない。ひとりぽっちが寂しくなっても傍にいてくれるお友達…ムーミン。

ところで真夜中の激しい音はいったい何だったのか、正体を知らないままカフェを出るところだった。強い風が吹いて窓が開いた、それだけのことだったらしい。「怖い」と言った娘とふたりで音のするほうを確かめにいったのは、それはそれでまたムーミンたちの冒険気分だったそうだ。

森下圭子

小児病院。子供たちが集まる場所では、こんな感じのものをよく見かけ。手作りでちょっとへんてこだけど、人のぬくもりを感じさせてくれるムーミン谷の住人たち。

散歩していて、ふとその風景がムーミンの一場面のように見えることがある。まだまだ寒いけど、でも確実に春に近づいてるんだなと思わせてくれる、まぶしい冬の日。