(105)西へ東へ グッズまで
おむつもシャンプーもチョコレートも、たぶんムーミンのそれらは、誰か自分以外の人の存在を想っているのではないだろうか。自分は普通のミルクチョコを食べても、友達にはムーミンチョコをついついあげたくなってしまうじゃないか。
もちろん自分が持ってたり使っていたりして楽しいからというムーミングッズはある。でもバッグやTシャツなんかと違って、持ちあるくことのないケチャップというところに、存在理由の圧倒的不利を感じるのだ。誰も見ないのに、誰かにアピールするでもなく、そんなところにミイ。そもそもケチャップを使うときに、どれだけの人たちがミイを見ながらオムレツの上にケチャップをかけているのだろう。っていうか、ケチャップを出すときは手でミイの絵がふさがっていないか?
その後、ヨーグルトとか、ケチャップ的な立ち位置のムーミングッズが案の定いくつかでてきた。そして、そんな商品が出続けるということは、フィンランドでは極私的なものでも、割高になっても、ムーミンである意味があるのだろう。ヨーグルトの容器なんて、棚に飾ることもないよなあ。
なんてことを考えていたら、さいきん袋に入ったグミが変っていることに気づいた。世界一まずいといわれるラクリッツやサルミアッキのラクリッツが、袋からいなくなっているのだ。
フィンランド人は大好きだけれども、日本はじめ外国人にはすこぶる評判の悪い黒いお菓子がラクリッツとサルミアッキ。「そんな簡単な差じゃない!」といわれるけれど、タイヤの味を思わせるまずくて甘いのがラクリッツで、まずくてしょっぱいのがサルミアッキ。
フィンランドで暮らして20年たっても、いまだに「まずい!」と思うこのお菓子。これまでは、黒いスティンキーが出てくるたびにテーブルに並べて途方にくれたり、どんどん友達にあげていたのだけれど、ついにグミを無駄にせずにすむ!!
新しくなったグミの袋はフィンランドの人が外国に持っていくお土産にもいいだろう。いまや日本の人たちも安心だ。タイヤの味はもういない。グミの袋といえば、必ずのようにラクリッツが入っているフィンランドだ。ラクリッツが入っていないグミの袋だなんて!ついに私も自分用のお菓子に、ムーミングッズを積極的に買うようになってしまった。
森下圭子