(96)公園の番人、トーベのいた風景

klovharu

トーベの夏の島、クルーヴハルで。ムーミンのぬいぐるみを持ってこんなことをしていると、フィンランドの人たちは本当に嬉しそうに微笑んでくれます。

 

フィンランドの首都ヘルシンキには、いたるところに公園がある。夏は天気がよければ芝生の上が人だらけだ。ピクニックに興じる人もいれば日光浴、昼寝、じっくり読書、最近では仕事をする人だっている。公園には思い思いのスタイルで楽しむ人たちが集う。最近トーベ・ヤンソンがいた時代のヘルシンキが気になっている。写真集や写真展などで、過去40年から100年ほどのヘルシンキの暮らしぶりが紹介されることが増えたせいかもしれない。

昔のヘルシンキの様子をあれこれ調べていて、まず驚いたのが公園だった。今では自由に寛げる場所になっているけれど、昔は番人がいたのだ。

木登りしようとする子供を注意したり、公園を自転車で突っきらないよう見張ったり、勝手に何か建てる人がいないか監視するのが仕事だったという。それから当時は犬を公園に連れてくることも、ボール遊びをすることも禁じられており、それらを取り締まるのも番人だった。さらにだ、公園の番人たちには制帽があり、公園によっては制服まであったという。

地図上では同じ場所にある公園も、今と昔じゃ勝手が違う。今は自転車で通りすぎる人もいれば、移動アイス屋がやってきたりもする。ボールやフリスビーで遊ぶ人はいるし、犬連れのピクニックだって珍しくない。要は利用しているひと一人ひとりの問題。公園の緑を育てるのも、ゴミのない場所にすることも、心地良い場所にするのも自分たち次第だ。

いまある公園を歩いていても、番人がいたなんてピンとこない。けれども『ムーミン谷の夏まつり』に登場する、あの番人こそがまさに当時の感じかもしれないと思う。あの時スナフキンは看板を次々と抜いていったけれど、今ヘルシンキの公園には看板などほとんどない。そして公園での人々の憩い方を見ながら、なんかいいなあ、ムーミンの世界を彷彿させるなあ、なんてことをしみじみ思ったりするのだった。

森下圭子

espa

トーベの父、彫刻家のヴィクトル・ヤンソンの作品。この噴水があるエスプラナーデ公園はピクニックの場所として、地元の人たちにも人気です。