(231)ムーミン美術館とアラビアのムーミンマグ【フィンランドムーミン便り】

ムーミン美術館のムーミン像と新アートマグ photo:VisitTampere/LauraVanzo
9年前の2017年、ムーミン美術館のオープンを記念して特別なマグが登場した。アラビアのムーミンマグといえば、通常はおよそ10色でデザインされるけれど、これは27色。しかもタンペレからヘルシンキにあるアラビアのオフィスまで原画を運び込んで制作されたという特別なマグだった。使われた柄はムーミン美術館のメインビジュアルにもなっている『たのしいムーミン一家』の表紙画。このマグは何年か販売が続いていたものの、在庫が終わったところで再販されることはなかった。その他のムーミン美術館限定グッズも年々少なくなっていき、いつの間にか限定グッズはなくなっていた。もう何年そんな状態が続いていただろう。突然、限定グッズが勢いよく復活した。
ムーミン美術館では9月26日からムーミンマグマニア展が始まった。日本限定のものも含めアラビアの全ムーミンマグが時系列で並び、ムーミンマグの歴史の他にコレクターたちのエピソードやデザイナーたちのコメント、さらにフィンランドのムーミンファンやムーミンマグコレクターの間で人気の日本のムーミンマグも紹介されている。そしてこのタイミングでムーミンの原画を使った第二弾のアートマグが登場した。最初の1ヶ月はムーミン美術館でのみ販売し、以降は数量限定ではあるものの、日本を含む各地での販売が予定されている。2017年のマグが緑や花に恵まれた夏の風景ならば、今度のものは冬の風景。とくにモランが印象的だ。
トーベ・スロッテからムーミンマグのデザインを引き継いだパルヴァティ・ピライは、このモランの佇まいが一目で気に入ったのだそう。モランの表情が優しく感じられたという。怖さよりも温かみ。前回のアートマグとのバランスを考えても夏の景色から冬の景色と申し分ない。絵の選択については、実はほとんど悩むことなくぱっと決まったということだった。
今回のムーミンマグマニア展、目玉の一つはこのマグの原画。作品はほぼ寝かせた状態で展示されている。かつてムーミン美術館では絵具の状態が脆いという理由で寝かせた状態で作品が展示されていたことがあった。今回もそれくらい慎重に扱う必要のある作品ということだろうか。原画は1972年に出版されたフランス語版『ムーミン谷の冬』の表紙。この絵を見ていると、フィンランドで迎えた最初の冬のことを思い出す。暗い冬の日に、部屋の照明は敢えて消して、ろうそくを灯す。炎のゆらぎに私たちの時間は刻々と息をしているのを感じたし、ろうそくの明かりは世界をほんのりと暖かい色に照らしてくれた。
しばらく限定グッズがなかったムーミン美術館。今ではマグのほかにチョコレートやメモ帳、ポストカードなど、美術館内に新たにオープンしたショップ内でいくつもの限定グッズが並んでいる。ミュージアムや展覧会の限定ものは日本でよく見かけるものの、実はフィンランドでは一般的ではない。そういえばムーミン美術館に行くたびに、念のためと「限定グッズありますか?」とカウンターで確認していた自分のことを思い出し、ひょっとして日本からやってきた人たちからのリクエストも多かったのかもなどと勝手に想像している。

ムーミン美術館内にできたムーミンショップには限定グッズもいろいろ photo:Muumimuseo/HannePeippo
森下圭子