ムーミントロールのご先祖さま

春が来た~春が来た~どこにきた~♪ 鼻にきた~喉にきた~目にも~きた~♪ 花粉症の皆さま、こんにちは。お身体の具合は、いかがでしょうか?(そして花粉症患者の気持ちを代弁した、森番の替え歌はいかがでしたでしょうか!?) もはや現代を生きる私たちにとって、春の嵐よりも桜の開花よりも温かい南風よりも、何よりも「花粉症」が春の訪れを感じさせる風物詩のようになってきてさえいますねー。近年は避暑地ならぬ、北海道や沖縄などの一部、花粉症のない地域で過ごすための、避粉地ツアーなるものまであるそう。中には、海外逃亡まで試みる方までいらっしゃるとか。。
そんな悩みはつきない近頃の日本の春事情ではありますが、来週21日はいよいよ「春分の日」ですね。日本国の祝日に関する法律によると「自然をたたえ、生物をいつくしむ」日と定められているようです。そう言われると、なんだかとても素敵です。また春分の日はお彼岸でもありますから、この機会に先祖代々のお墓参りへ行かれるという方も多いかもしれません。

『ムーミン谷の冬』(講談社/ 山室静訳)の「おかしな人たち」には、そんなお彼岸へも通ずる、ムーミントロールのご先祖さまというキャラクターが登場します。原作をすでに読んでいただいている方はご存知のことでしょうが、このご先祖さま、めちゃくちゃ愛らしいのです。まずは水あび小屋の戸だなに住んでいたご先祖さまが、ムーミントロールによって邪魔され登場する以下のシーン。

「ゆかの上に、なにか小さいものがいて、こっちをにらんでいるではありませんか。それは、長い毛におおわれた、大きな鼻をした、灰色のものでした。」

そりゃ、睨みますよね!いったいいつ頃からご先祖さまがそこに住まわれいたかは分かりませんが、平穏な戸だな暮らしを邪魔されたご先祖さま!かなりご機嫌斜めです!
そして次のシーンでは何故かムーミン屋敷のシャンデリアの中から登場する、ご先祖さま。。。
「毛むくじゃらの小さないきもので、長い黒いしっぽが、ガラス玉のあいだから、たれさがっていました。」

まさに頭隠して、尻尾かくさず!といった感じでしょうか。これにはムーミンも「ぼくのご先祖は、シャンデリアの中に住みついたんだな。」としか反応せざるを得ません。
出会った当初こそ「(あんなの、うそっぱちだ。ぼくは、あんなやつと、血のつながりなど、ありっこがないさ。)」と、自分とご先祖さまのつながりを躍起になって否定していたムーミン。しかしその後、ご先祖さまを親類として丁重にもてなします。ムーミンは早速、ご先祖さまに家の中を案内しながら「ねうちのあるうつくしいものは、なにもかも、すっかり見せてやりました。」 ところが当のご先祖さまの方はというと、全くの無関心なのですね。しかしムーミンが手にもっていたランプを大ストーブの上に置いた途端、ご先祖さまは「ひどくねっしん」になります。そうです、ご先祖さまはまさかの、ストーブ大好きご先祖様なのです!!

「シャンデリアからドスンととびおりると、小さな灰色のぼろのかたまりみたいなかっこうで、大ストーブのまわりをちょろちょろしはじめました。たき口へ頭をつっこんで灰のにおいをかいだり、ししゅうのついた調節器のひもに、つよい興味をしめして、大ストーブとかべのすきまを、じっとのぞきこんだりしました。」

ストーブに喜ぶご先祖さま、やたら可愛いですねー。家で飼いたいくらいです。そしてムーミン自身もそんなご先祖さまの様子に、思わず興奮します。

「(ぼくらは、たしかに血がつながっているんだ。ママがいつも、ご先祖は大ストーブのうしろでくらしていたと、いってたっけ......。)」

それからも鳴りだした目覚まし時計にびっくりして、灰かぐらを立てて大ストーブの中へ飛び込んだり(目覚まし時計はその後、ご先祖さまの手によりゴミ箱行きに)、家じゅうの模様替えを、一晩の内にびっくりするような力をだしてやり遂げ、居心地がいいようにしたりと何かとせわしないご先祖さま。そんなご先祖さまの姿を見てムーミンはこう楽しく思いにふけるのです。

「(千年まえは、ぼくはたぶん、こんなふうにくらしていたんだろうな)」

そして、急にご先祖さまがいることが誇らしくなったムーミン。なんだか心温まる、ムーミンとご先祖さまの交流ですね。
私たちもぜひ、このお彼岸という時期を、祖先と私たちのつながりを改めて確認する良い機会としたいもの。もしかしたら家族でお墓参りへ行ったり、親戚同士集まっている中で、そんな機会があるやもしれません。そしてご先祖さまと交流したムーミンのように、自分たちの中に、何か祖先から脈々と受け継がれているものを知って、幸せな気持ちになれるかもしれませんね。

新金庫番です。そんなご先祖様とムーミンとのかわいい交流が、ちょっと変わったアートで観られるのがこちらの展覧会。

大丸京都店の大丸ミュージアムにて開催中の『MOOMIN パペット・アニメーション展』にて展示されている画像

詳細はこちらのムーミンニュースページからご確認ください。会期は2018年3月14日(水)~2018年4月3日(火)。パネル展示には、実際にパペットを監修しているトーベ・ヤンソンのやさしいまなざしが美しい当時の写真も追加されました。お近くの方はぜひお立ち寄りください。今週は春のお彼岸に合わせ、ムーミントロールの可愛いご先祖さまについて紹介しましたが、いかがでしたでしょうか?

ではまた来週まで、アディオ~ス!!