トーベ・ヤンソンと「切手」との深いかかわり

ご無沙汰しておりました。新年早々、家族に「行ってきます」と玄関で言う代わりに、「おやすみなさい」と言ってしまった、正月ボケ全開の森番です。皆さまは年末年始休暇、いかがお過ごしになりましたか? 森番は冬の軽井沢で、寒空の下をヒ-ヒ-言いながら散歩したり、凍った池とそこにいる鴨の親子を見たり、煙をだしつづける浅間山を遠くに眺めながら、のんびりと過ごしておりました。

ところで前回のブログでは少し、年賀状について触れておりましたが、なんと2018年1月10日(水)に、日本郵便から、ムーミンのグリーティング切手が発売となりました。(詳細はこちらの日本郵便のページから
そうなんです~!切手大好き、新金庫番です。
今回のムーミン切手も、前回2015年5月1日に、初めて日本で発売されたグリーティング切手に引き続き、日本郵便の切手デザイナー、中丸ひとみさんのデザインによるもの。中でも82円切手のシートには、「ムーミンたちとお手紙」というテーマがあるそうで、切手オリジナルのイラストなのです。確かに、82円のシートのムーミンたちは、みんな手紙を持っていますね。描き起こしだとは、言われなくては気づかないほど、それぞれのキャラクターが、とっても自然に手紙と関わっているのがさすがです!
さて、これがどんなコミックスのシーンに出てくるイラストを参考にしたかは、ムーミンファンなら分かるでしょうか?

そしてこちらの写真が、切手の発売日のみ押印されるという、特別限定デザインの消印。
こういった初日限定の消印が押されたものが、コレクターアイテムである、初日カバーなんですね。特に大きな、決まった郵便局だけで押印が可能なのですが、局によっても、押せるデザインが違ったりするのです。

今回はムーミン谷倉庫から選抜メンバーとしておやつ番が、初日カバーをゲットしにおやつを食べ食べ、郵便局に向かいました。京橋郵便局の中に限定的に開設された、東京中央郵便局の記念押印特設会場にて、居並ぶ切手コレクターさんたちに、入手方法や押し方などの講義をお聞きしながら、やっとのことで数枚を入手できたようです。
あちこちの列に並んでおられるのは、老若男女すべてがコアな切手ファン。おやつ番も相当気おされたようですが、上の写真のような「絵入りハト印」(イラストのそばに、ちっちゃく伝書バトの絵が描いてあるでしょう?)が、左の手押し印と、右の押印機用で、デザインが違うのはわかったようです。ちゃんと2回並んで押してきたのは偉かったわ!!

初日カバーとは、そんなにレアなものだったのですね!知りませんでした。。。
切手にも、まだまだ森番の知らないであろう、奥深い世界がありそうです。
そんなコアな切手コレクターの方々が読まれるであろう、雑誌『郵趣』1月号の記事によれば、中丸さんは切手をデザインする上で、想いを込められる「余白」を残すことを心掛けていらっしゃるそうです。ご本人曰く「書き手の想いと合わせて初めて完成されたものになるように、あえて隙間をあけたり、切手だけで完結しないように気をつけています。」
とのこと。そんな中丸さんの切手デザイン哲学がつまった、今回のムーミンのグリーティング切手。切手を使う人や、手紙を受け取った人が、思わず想像を膨らましたくなるような、そんなムーミンたちの姿が描かれています。
特にリトルミイがムーミンへ、無愛想に手紙を突きつけるイラストは、「ぶっきらぼうなミイの性質をよく表している」として、フィンランド郵政の担当者からも大好評だったとか(「産経ニュース」【経済インサイド】中丸ひとみさんインタビュー記事より)。

そして、昨年2017年5月には、本国フィンランドでも、ムーミン美術館の新規オープンを記念して、切手が発売されました。これらの切手は、トーベ・ヤンソンの原画を基にデザインしたというだけあって、より原作ムーミンの雰囲気が、色濃く反映された仕様となっております。
photo:Moomin.com

こうして改めて見てみると、日本のムーミン切手とフィンランドのムーミン切手、それぞれにまた違った良さと、オリジナリティーがありますね。フィンランドでは過去にも、様々なムーミン切手が発売されております(過去のムーミンニュースにて、年代別にご紹介しています!)。

photo:Moomin.com

このように、日本とフィンランド、両国において発売されるようになった、ムーミン切手。
『芸術新潮』(2009年5月号)の「トーヴェ・ヤンソンのすべて」を読んで知ったことですが、ムーミンの作者トーべ・ヤンソンと「切手」というのは、切っても切り離せない(切手だけに!)、深いかかわりがあったのです。
というのも、トーべ・ヤンソンの最愛の母親で、グラフィックデザイナーだったシグネ・ハンマルステイン・ヤンソンは、売れっ子挿絵画家でありましたが、本の表紙画や雑誌の挿絵だけにとどまらず、切手のデザインも手掛けていました。ヘルシンキのフィンランド郵政のコレクションには、そんなシグネが手がけた切手が多数、収蔵されているというのだから驚きです。(昔はヘルシンキの郵便博物館で見ることができましたが、今その博物館はありません。by 新金庫番)


母親シグネをはじめ、彫刻家であった父親ヴィクトルの姿を見て育ち、自らも芸術家となる道を選んだトーベ・ヤンソン。両親からの影響は、計り知れないものであったようです。そしてそんなトーベ・ヤンソンが生み出したキャラクターのムーミンが、巡り巡って、今度は切手デザインのモチーフとなる。それも本国フィンランドのみならず、遠く離れた日本においても。なんとも不思議な縁ですね。誰よりもトーベ・ヤンソン本人が、そんなことになるとは、想像だにしていなかったのではないかと思います。私たちも、そういう背景を知った上で、ムーミンの切手を手にしてみると、また違った気持ちになりますね。皆さんもこの機会に、各々、ムーミン切手に自分なりの想いを込めて、お手紙を書かれてみてはいかがでしょうか?

今週はムーミンのグリーティング切手発売に合わせて、トーベ・ヤンソンと「切手」の関係について、お話させていただきました。まだまだムーミンやトーベ・ヤンソンについて、知らないことがたくさんあって、これから一つずつ発見していくのが楽しみです!それでは皆さま、また来週、お目にかかりましょう~。

では、また来週まで、アディオ~ス!!