誰もが欲しがったレアアイテムのムーミンマグ~アラビアのムーミンマグ物語


フィンランドの陶器メーカーアラビアは、1990年から、ムーミンのマグカップを販売しています。毎年新しい絵柄が次々と発表されるムーミンマグは、熱心なコレクターファンも多い、人気の商品です。このシリーズでは、絵柄のもととなったトーベ・ヤンソンのイラストや、レアアイテム秘話などをご紹介していきます。

「フレンドシップ」2018年

2018年にフィンランド限定で販売された、美しいムーミンマグカップ「フレンドシップ」には、トーベ・ヤンソンの2冊目の絵本『さみしがりやのクニット』(1960年)のイラストが使われています。孤独で臆病な生きもののクニットとスクルットが、白夜の月明かりに照らされた花畑で出会う瞬間を描いています。

「フレンドシップ」シリーズは、実は2015年から2016年秋に続いて発売されたもの。この2018年6月に発売されたマグカップに先がけ、ボウル、ジャー、ピッチャー、大皿、プレートで構成されていました。

 

「ムーミンの日」限定マグ 2018年8月9日

「ムーミンの日」のマグカップは、2018年、トーベ・ヤンソンの誕生日である8月9日に発売され、大きな注目を集めました。美しい色彩でマグカップに描かれている風景は、ムーミン・コミックスを連載していたアソシエイテッド・ニューズペーパーズ社が1955年に発行した、広告パンフレットに掲載されていたもので、トーベが弟のラルスと一緒にフィンランドのペッリンゲで購入した島がモチーフとして描かれています。この広告パンフレットを使って、ムーミン・コミックスは世界中の新聞社に売り込まれたのでした。

そこに描かれているキャラクターのイラストは、トーベ・ヤンソンの小説『ムーミン谷の冬』(1957年)からのものです。構図や配色は、こちらもいつもムーミンマグのシリーズを手がけているアラビアの陶芸家トーベ・スロッテによるものです。

 

このムーミンの日のマグカップは、イッタラの限られた店舗と、ヘルシンキのムーミンショップ、オンラインのムーミンドットコム(Moomin.com)で限定販売されました。この日1日だけの限定で、在庫限りの販売だったため、多くのお店では数時間、ところによっては数分で完売してしまい、欲しいと思っていた人全員が手に入れることはできませんでした。

このマグカップの販売が発表されたのは2ヶ月前。そのとき、アラビアも小売業者も予想以上の需要があることに気づきました。しかし、マグはすでに前年に行われた過度に慎重な予想にもとづいて製造、納品されていたため、2ヶ月という短期間でこれ以上製造することはできなかったのです。

 

「ライト・スノー・フォール」2018年

「ライト・スノー・フォール」のシリーズは、2018年から2019年の冬に発売、販売されたもので、マグ、ボウル、ミニマグ、2本の小さなスプーンで構成されています。このシリーズは、ムーミントロールが初めて雪が降るのを見た瞬間、雪に覆われたムーミン谷を知る場面を描いています。

この青いシリーズは、アラビアの初期の冬期限定製品とはスタイルが異なります。トーベ・ヤンソンの原画がスクラッチ技法で描かれているため、アラビアはこのシリーズに多くの色を用いなかったのでした。トーベ・スロッテは、トーベ・ヤンソンのモノクロームの原画をもとに、そのモチーフを合わせています。

翻訳/内山さつき

※原画、イラストはすべてMoomin Characters社によるもの、商品画像はFiskars社によるものです。