ムーミンの短編が教えてくれる、クリスマスの本当の意味


ムーミンたちは、クリスマスをお祝いしません。クリスマスというものになじみのないムーミンたちが、突然クリスマスの準備を手伝うことになったら、一体どうなってしまうのでしょうか?

冬が近づくと、ムーミンたちは冬眠の準備をします。ムーミン谷が雪に包まれる頃、もう深い眠りの中にいるので、ムーミンたちはクリスマスはお祝いしません。むしろ、クリスマスが何なのかさえも知らないのです。

しかし、トーベ・ヤンソンが1962年に出版した、『ムーミン谷の仲間たち』に収録されている短編『もみの木』には、クリスマスに関連したムーミンたちのイラストがあります。このお話では、ムーミン一家が冬眠から覚め、初めてクリスマスと出会うのですが、注意深く読み解けば、この物語を通してとても大切なことを学べるかもしれません。

 「それは、必要としている人に心を込めて、惜しみなく分け与えるための時」

目を覚ましたムーミン一家は、クリスマスが恐ろしい何かだと勘違いしてしまいます。クリスマスの機嫌を損ねないように、できる限りクリスマスのしきたりを守ろうと大慌てになるのでした。

ムーミンパパは、小さなクニットが「クリスマス、おめでとう」とささやいたとき、こう訊ねます。「そんなことをいったのは、きみがはじめてだよ。きみはクリスマスが来ても、ちっともこわくないのかね?」

トーベ・ヤンソンの本を出版しているイギリスの出版社、Sort of Booksのナタニア・ ヤンス氏は、この物語に込められたメッセージは、特にクリスマスの季節だけではなく、1年のいつでも大切なものだと語っています。

「ムーミン一家は、クリスマスの直前に偶然冬眠から目覚めて、フィリフヨンカやヘムレンたちが、大切な日の準備のために急いだり、ストレスを感じたり、大騒ぎをしたりしているのを見て、びっくりしてしまいます。それでムーミンたちは、おかしなことに完全に無邪気に、クリスマスはおそろしいものだと誤解してしまったのです」

彼女はこう続けます。「でも、ムーミンたちは、ムーミンらしいやり方で、この祝祭の本当の意味を見出します。それは、クリスマスとは必要としている誰かに、心を込めて惜しみなく分け与えるための時だということです。私はこの時期に、他者と関わることの大切さと、与えることの喜びを思い出させてくれる、これ以上の物語はないと思っているんですよ」

 

『ムーミン谷の仲間たち』の特装版は、現在15万部以上を売り上げていて、その収益はすべて、世界の女性と少女を支援するオックスファム・プロジェクトに役立てられていると、ヤンス氏は語ります。

この特装版は現在、ほとんどの書店で品切れとなってしまっていますが、通常版の『ムーミン谷の仲間たち』は、現在もオンラインや書店で購入することができますよ。

翻訳/内山さつき