(151)ムーミンと不思議な2月

ムーミン氷の洞窟は6月までオープンの予定。ヴェシレッピスというスパホテルの地下にある氷の洞窟、詳細はHPをご覧ください。

ときどき「私たちもムーミンたちのように冬眠できたらいいのにね」という声を聞く。今年は特にそんな気持ちになりやすい。識者が「今年は11月が4カ月続いているみたいなもんですからね」と話すほど、フィンランドの南部では雪を見ることも海の上を歩けるほどの極寒の日々もなく、ひたすら雨の日が続いた。一年で最も憂鬱な時期が4カ月続く感じ。こうなると睡眠が分断されやすく、食欲が増してとくに甘い物を欲するようになるのだとか。こんなストレスを抱えたまま、私たちは春を迎えようとしているのか?

不思議な2月だ。やっぱり冬の醍醐味をきちんと体験してからでないと、春は迎えられない気がする。そんなわけで、今年もヘルシンキからバスで4時間半ほどのところにあるレッパヴィルタの『ムーミン氷の洞窟』に行った。

休日でも楽しいからとムーミングッズの在庫管理をしに来ているスタッフがいたり、関係者の誰もが「ねえ、去年よりさらに良くなったでしょ?」と自慢したくなる氷の洞窟。今年はアニメに基づいたムーミンの世界が氷で作られている。今年は氷に雪をうまく組み合わせてみたり、氷の表面に細工をすることで、光の屈折がやわらかく表情豊かになったり。さらに順路や配置も、別の作品が視界にでかでかと入り込まないよう改善されていた。加えて今年は記念撮影できる場所も意識的に設けられている。久しぶりに氷と雪の世界にいて、途中お腹が冷えていくのを感じていたけれど、気づけば2時間ほどぐるぐると作品を見て回っていた。それにしてもだ、寒い冬が恋しい!なんて言いながら、その寒さがどんなものか、すっかり忘れているとはだ。

2月に入り、ムーミンの周辺は海や環境の話で賑わってきた。ボート関連の見本市ではジョン・ヌルミネン財団とムーミンによる海を守ろうのキャンペーンブースが登場。そこでは海を守るため、海洋保護のために私たちができる身近なことを学んだり、海の現状の紹介ビデオ、さらにムーミンの小さなアニメーションやトーベ・ヤンソンの8㎜フィルムがあったりと、盛りだくさん。私たちができる身近なことの中には「海でおしっこはしないでね」なんていうのもあった。

ムーミン美術館では『ムーミンと海』展が始まった。立っていると、うっすらと海の中の音が聞こえ、海を感じながら海の挿し絵を鑑賞できるようになっている。

ヘルシンキ美術館でもトーベの島暮らしの映像が流れていたり、トーベの島での様子を撮った写真が並んでいる。

ムーミンワールドは例年通りフィンランドがスキー休暇の一週間だけ開園された。かつては海で思い切り遊べるほど凍っていたというのに、ソリ滑り用の雪ですら、集めるのに苦心したようで、どこもかしこも11月と変わらない2月の景色だった。

ムーミンワールドのあるナーンタリ、トーベが夏を過ごしたペッリンゲ、どちらの群島地域も暖冬な上に雨続きや嵐で、あちこちが浸水してしまった2月。

こんなことなかったと言われるほどの暖冬になったこの年に、ムーミンが海を守ろう!と環境のことを一緒に考える機会を作っているのも何という巡りあわせだろうと思う。

ムーミンを通して、そこに居合わせた人たちと一緒に、海や環境にやさしくなることを学んだり、自分がいいなと思える未来の風景を思い描いてみたり。今年はこんな機会が増えそうだ。来年は雪があって海も凍ってくれる、そんな2月がきてくれるかしら。

ボート関連の見本市に登場したジョン・ヌルミネン財団とムーミンのブース。のれんの向こう側では、映像をふんだんに使った海や環境のことを学べるコーナーが。売り上げの一部が海洋保護への寄付になる#oursea(私たちの海)タグのついた商品も数が増えてきました。

森下圭子