(141)そこまでしてでもムーミンマグ

フィンランドの空の玄関口、ヘルシンキ・ヴァンター国際空港にはムーミンショップの新店舗が。2店舗目はムーミン絵本『それからどうなるの?』のページを開いたよう。

フィンランド便りと言いながら、実はいま日本にいる。せっかくの日本、日本の美しいところや面白いところを旅したいと思いながら、私はムーミンバレーパークにいた。正直に言おう。フィンランドの人たちからの無言のプレッシャーに、「これは行かないとまずい」と思ったのだ。

日本にできたムーミンのテーマパーク。これがフィンランドで大きな話題になったのだ。タブロイド紙、日刊紙が次々と騒いだのは、日本にできたムーミンのテーマパークで、アラビア製のムーミンマグが販売され、これを巡ってフィンランドのムーミンマグコレクターたちが大騒ぎというのだ。

どうやったら手に入るのか?
何、誰かがネットで売るって?
誰かに頼めないのか?
直接または回りくどく、私が日本に行かないのか、ムーミンバレーパークに行く予定はないのか?と聞いてくる人もいた。

マグの情報が出て、すぐに日本行きのチケットを取った人もいた。さらに、うまいことやってマグを手に入れた人たちの中には、何倍もの値をつけてネットで売り出した人もいる。ムーミンバレーパークがオープンして一ヶ月もしないうちに、フィンランド人のSNSに、アラビア製ムーミンバレーパークのマグを手にしている画像があがるようになった。

きっかけはムーミンマグ。でも、それから少しずつテーマパークそのものの話をする人たちが出てきた。フィンランドの人たちの感想は総じてどれも良く、中には「自分はこっちの方が好きかも」と答えている人たちもいた。

ムーミンの世界とフィンランドの日常には接点が多いこともあり、フィンランドにあるムーミンワールドは、のびのびしていて自由度が高い。ムーミンママのハンドバッグの中には、おしゃぶりを卒業する子どもたちがムーミンママに渡したりするので、そんなものが入っていたりする。

ムーミンバレーパークは丁寧にムーミンの物語を再現しているな、そんな思いであちこちを歩いて回った。展示物、敷地内にさりげなく置かれている挿絵の一場面。そうそう、ロゴをプリントするだけでない、商品ごとにデザインされたムーミンバレーパーク限定のオリジナルグッズの数々。そうだ、ムーミンママのハンドバッグの中身も、原作に忠実だ。日本にできたムーミンのテーマパークが好きになったフィンランドの人たちの気持ちがわかる気がした。こういう感じ、フィンランドの人たちにはとても新鮮だろうと思う。

フィンランドは、やっと春を告げる花が咲き始めた頃。その春の訪れに乗せて…と、ムーミンバレーパークからフィンランドにハガキを出した。

森下圭子

ムーミンバレーパークにお別れを。振り返ると、湖越しに灯台が小さく見えるではないですか。ムーミン一家が灯台の島をあとにしたときは、どんなだったのか、振り返ったりしたのでしょうか…。