
【場所】:神戸市 元町映画館2F
【料金】:1500円(2種のおやつ付き)
http://www.motoei.com/
【ご予約方法】
事前予約制となっております。詳しくは元町映画館のWEBサイトにてご確認ください。
【場所】:京都市恵文社一乗寺店イベントスペース「コテージ」
http://www.cottage-keibunsha.com/
☆トークゲスト:森下圭子さん
☆フィンランドにちなんだ飲み物とお菓子付き(飯島奈美さん監修のスパイスを使ったホットドリンク&京都「てふてふ菓子店」のお菓子)
【ご予約方法】
事前予約制となっておりますので、恵文社の店頭または電話(075-711-5919)
コテージのWEBサイト(http://www.cottage-keibunsha.com/)にてお申し込みください。

映画『トーベ・ヤンソンの世界旅行』について
ムーミンの作者として知られるトーベ・ヤンソンは、ムーミンひとつをとっても童話やコミック、戯曲など幅広く活躍しましたが、その他にも芸術家として様々な作品をのこしてきました。そのうちの一つが映画。晩年パートナーと夢中で取り組んだ映画制作では、ドキュメンタリー素材をいかにフィクションにするか、そんな実験的ともいえる三部作を完成させました。
トーベ・ヤンソンの世界旅行はその三部作の第一弾。1971年の初来日のときに手に入れた8mmカメラで撮影した日本から始まる旅の記録をもとに作られた作品です。
71年の日本の様子、編集された映像を20年ほどの時を経て見ながら当時を振り返るトーベとパートナーのトゥーティ(ふたりが言葉の通じない日本で、目にする光景を自己流に解釈しているコメントも!)。
日本のドキュメンタリー素材をフィクションにするため、時折挟み込んだトーベ・ヤンソンのテキスト(短篇小説から)も、トーベ・ヤンソン本人が朗読しています。
わずか58分の作品ですが、この上映の前にムーミン研究家でフィンランド在住20年になる森下圭子が、この映画ができるまでの背景やエピソードなどを少し解説させていただきます。また上映後は、フィンランドの人たちの旅のスタイルや楽しみ方などのお話をさせていただく予定です。
当日はフィンランドにちなんだ飲み物とお菓子を予定しています。フィンランドでは、森を歩いていても旅していても、仕事をしているときだって、ちょっとしたおやつと温かい飲み物でとるひと休みを、とても大切にします。こういった会でもフィンランドでは欠かせないおやつと飲み物。映画や話だけでなく、フィンランドの人たちの時間の過ごし方を、少しでも体験していただけたらと願っています。

トークゲスト / 森下圭子 Keiko Morishita
1969年生まれ。ムーミンの研究のため1994年フィンランドに渡り、ヘルシンキ大学で学ぶ。研究の傍ら、芸術プロデュースの仕事を経て独立。雑誌、TVの現地コーディネート、通訳、翻訳などで活躍。主な訳書に『ぶた』、『アキ・カウリスマキ』、『ちびのミイがやってきた』、『トーベ・ヤンソン 仕事、愛、ムーミン』(共訳)などがある。映画『かもめ食堂』(2006年)のアソシエイト・プロデューサー。ヘルシンキ在住。

トーベ・ヤンソンと映画(ドキュメンタリー三部作)について
「トーベ・ヤンソンが晩年に辿りついた楽しいこと」
ムーミンの作者トーベ・ヤンソンは、晩年に新しい楽しみを見つけました。映画です。大人が夢中で遊んだっていい。トーベとトゥーティは、自分たちが撮りためた8mmを使って映画を作ることや、新たに映画を制作することを企てるようになります。
「トゥーティ」とはムーミンシリーズに登場するトゥーティッキ(おしゃまさん)のモデルとなったトゥーリッキ・ピエティラのこと。トーベのよき理解者であり、人生に欠かせないパートナーでした。
大好きな映画なら10回でも映画館に通い、同じ映画を10回観ても、新鮮に喜び感動しているトーベ・ヤンソンの姿について話してくれた人がいます。トゥーティの家を訪ねると、トーベに「今日の映画はこれとこれと…」と見つくろってあげているトゥーティ、ふたりが映画に夢中になっている様子を目撃する人が少なくありませんでした。二人には沢山の共通の楽しみがありましたが、そのひとつが映画だったのです。
トーベ・ヤンソンは有名になりすぎてしまったある時期から、生まれ育った街ヘルシンキで外出することがほとんどなくなってしまいました。晩年は島での暮らしも手放し、大好きなパリや異国の地の旅も年齢とともに回数が減り、最後はそれすらしなくなってしまいます。こうして歳をとっていくトーベとトゥーティは、かつての自分たちの旅や島暮らし見直そうと閃いたのです。8mmで撮影した記憶の断片たち。友達を集めて上映会をしたらどんなに楽しいか…そんな夢とともに、改めてこの8mmを映画作品にしようと考えます。
「8mmカメラとの出会い」
さて8mmですが、すべては日本への旅から始まりました。1971年、日本に招かれたトーベは、往復の航空券の代わりに2枚の片道切符を手配してもらい、トーベとトゥーティは日本にやってきます。その日本滞在中、ふたりは8mmカメラを手に入れたのです。すぐに撮影が始まりました。カメラに「コニカ」と名付け、まるで三人目の旅仲間が加わったかのように、トゥーティは(時にはトーベが)そのコニカを片時も離さず、旅や日々の暮らしの様子を記録していくのです。このときの旅は結局8ヶ月続き、二人はコニカと共にハワイやメキシコ、アメリカと世界を旅しました。
「映画にしよう」
もともと「記録=撮影」はただただ楽しむものでした。ところがそこに面白いアイデアが生まれるのです。「ねえ、これを編集し直して、フィクションの映画にできたらいいと思わない?」
そのきっかけは、トーベの昔からの画家仲間の娘さんでした。小さな頃からよく知るその少女は、映画監督になっていたのです。監督の名はカネルヴァ・セーデルストロム。大学の映画学科で教授も務め、フィンランドのドキュメンタリー映画界を牽引する一人です。そんな彼女が84年にトーベが書いた小説『人形の家』をベースにした映画を撮ったことがきっかけで、一時は疎遠になっていたトーベとカネルヴァは再び連絡をとり合うようになります。それから何年かが過ぎ、いよいよトーベとトゥーティの撮りためた8mmフィルムで映画を作ろうという話になったのです。プロジェクト開始です。トーベとトゥーティは楽しみながらも、この作品作りに真剣に取り組みました。
「ドキュメンタリーだけどフィクション」
8mmフィルムに刻まれた「記録」は自分たちの旅や暮らしの様子を撮影したものです。ただ、この「ノンフィクション=記録・ドキュメンタリー」素材をつかって「フィクション」の映画を作ろうということになりました。
特に乗り気だったのはトーベ。そのために追加で脚本を書いたり、新しいストーリーの構想にあわせて追加撮影したいと言い出すほどだったそうです。「ドキュメンタリー」の素材で完全な「フィクション」を作るというのは、生まれついての芸術家だったトーベらしいアイデアです。ただ実際には追加撮影は内容的に諦めてもらうしかないものでしたが、それでも「フィクション」を念頭においた作品作りが続きました。

「三部作構想」
映画は三部作にしよう。まず世界を旅する作品、その次は小さな小さな島ひとつの空間の話、最後にヨーロッパがいいんじゃないかな。こうして題材はあっという間に決まり、そこから記録の整理が始まりました。さらに三部作は映画のスタイルも、少しずつ違うものになりました。
こうして「トーベ・ヤンソンの世界旅行」「ハル、孤独の島」「トーベとトゥーティの欧州旅行」の三作品が完成しました。
「三部作について」
「Travelling with Tove(トーベ・ヤンソンの世界旅行)」ははじめにカネルヴァが8mmフィルムを編集し、その映像を一緒に見て、トーベとトゥーティがああだこうだと旅の思い出に浸ったり、さまざまなエピソードを思い出しては談笑します。その様子(音声)をカネルヴァが追加で録音しています。実は1回目の録音はトーベとトゥーティが爆笑するばかりで、ちっとも作品らしいコメントがとれなかったそうです。世界を旅した「昔の映像」に、それを懐かしがるトーベとトゥーティの音声(言葉)が編集され、過去と現在が一本の作品の中で融合しているのです。さらにこの作品ではトーベ自身が自らの短編(『コニカとの旅』)を朗読しています。
日本の人たちにとって面白いのは、71年秋の日本の様子が見られることではないでしょうか。当時の町や人の様子は必見です。日本語を知らないふたりが、日本のいろんなものを見ながら勝手に想像している様子も面白い。たとえば開店祝いの花が並んでいるのをみて「お葬式」だと思っているやりとりだとか。
二人の気ままな旅にはいくつかの決まりがありました。例えば新しい町についたらまず宿探し。荷解きをするのはトーベの役割り、トゥーティは町に出て食料と花を買ってきます。どこにいたって心地良い空間を作るのが上手な二人は、その旅のスタイルも自己流です。心の赴くままに、風に導かれるがままに。そうして出会った光景や日々の様子は、トーベ・ヤンソンの小説にも数多く登場しています。作者が実際にどのように旅して小説が生まれたのかという視点から観ても、この映画は面白いのではないでしょうか。
「Haru, the Island of the Solitary(ハル、孤独の島)」は二作目にあたる作品です。ここでもう一人の映画監督が加わります。リーッカ・タンネル、脚本家であり映画監督でカネルヴァの心強い右腕です。小さな島での20回の夏の様子を一つの作品にまとめるという作業では、四人の芸術家のそれぞれの気持ちがぶつかり合うことも少なくなかったといいます。トーベとトゥーティが親しんだ島の暮らしで当人たちが見せたい場面や光景はたくさんありますが、同時に作品として20年の年月を不自然にさせないようにしなければなりません。さらに映画にすることなど念頭になかった素材で、それでも島のサイズや島の自然を映画的に見せるにはどうすればいいか、結局完成までに2年の歳月を要してしまいます。一作目に続きこの作品でもトーベの朗読を希望していたのですが、すでに病に臥せりがちな時期で、最終的にはトーベが選んだ女優に朗読してもらうことになりました。トーベとトゥーティの声はこの作品では登場しません。
三作目はヨーロッパの旅を題材にした「Tove and Tooti in Europe(トーベとトゥーティの欧州旅行)」です。残念ながら前の二作のようにトーベが積極的に関わることは叶いませんでした。トーベの命はそれほど長くはないという状況での編集作業でしたが、トゥーティは自分たちの思い出に浸るにとどまらず、三部作の最後の作品として、この作品をまとめました。ヨーロッパ中を旅した中から、あえて国の数を絞り、トーベの短編小説からの抜粋とトゥーティの今のインタビューから構成された脚本を用いて、21年の「旅の記録」を「フィクション映画」に仕上げました。カネルヴァとリーッカは時には一回きりの旅を、またあるときは何年にもわたる同じ街の記録をいかに一つの作品としてスムースに見せられるかを念頭に、監督編集していきました。トーベとトゥーティの言葉は、ふたりの女優がそれぞれのテキストを朗読するスタイルをとっています。
制作裏話
この8mmフィルムはビデオと違い、映像と同時に音声が録音されません。そのため音をどうするかは、作品作りの上で重要な課題でした。その部分をカネルヴァはあえて経験の少ない若い学生たちに任せます。これでまたひとつ世代の違う人たちが作品作りに加わったことになります。トーベとトゥーティが撮影し、彼女たちにとっては子供の世代にあたるカネルヴァとリーッカが編集にあたり、さらにこの二人にとっても子に近い世代の学生たちが音作りに携わることになったのです。
小さな「コニカ」で趣味程度の気持ちで撮影した8mmの「記録」は、映画とは少しタイプの違う素材ではありました。フィンランドのグラフィック界の一線で活躍したトゥーティのとらえる構図、トゥーティやトーベが面白いと思うものは、映画監督をはっとさせるものがたくさん詰まっていたといいます。
二人が晩年に至るまで、好奇心旺盛に生きたその生き様、新しいものを見つけてはそれを心底楽しむ様子が、これらの作品に刻まれています。世界を旅しても島にいてもヨーロッパの片隅にいても、ふたりの姿勢は一貫していて、そしてとても幸せそうなのです。
「世界旅行」から始まるトーベ・ヤンソンの秘蔵フィルム3部作。2作品の生産限定DVD発売中!(ビクターエンタテインメン ト)

「Haru, the Island of the Solitary ~ ハル、孤独の島」 4,200円(税別) VIBF-5556
© Lumifilm Oy, 1998 Licensed through Tuttle-Mori Agency, Inc., Tokyo
© 2014 Victor Entertainment, Inc.

「Tove and Tooti in Europe ~ トーベとトゥーティの欧州旅行」 4,200円(税別) VIBF-5557
© Lumifilm Oy, 2004 Licensed through Tuttle-Mori Agency, Inc., Tokyo
© 2014 Victor Entertainment, Inc.
「ムーミン」の原作者として世界的に有名な、作家、そして画家のトーベ・ヤンソンと、グラフィックアーティストの トゥーリッキ・ピエティラは、1971年、日本への旅の途中で「コニカ」の8mmカメラを手に入れます。 「コニカ」を手にしたトーベとトゥーティは様々な様子を撮りためていきます。 夏の島での暮らし、そして旅の模様……。
トーベとトゥーティが自分たちの為だけに撮りためた「ドキュメンタリーフィルム」を使いながらも、まるで「フィクション」のような美しい作品として完成した貴重な映像作品です。

映画『トーベ・ヤンソンの世界旅行』の上映についてのお問い合わせは、以下までご連絡ください。
『トーベ・ヤンソンの世界旅行』上映委員会
担当/大谷(090-9346-0432) 笠原(090-4914-0657)
travellingwithtove@outlook.com
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