(40)ヘルシンキにムーミンスポット

子供に読書の楽しさを伝えていきたい。この理念で誕生した新聞博物館で、3月12日からムーミン展が始まった。タイトルは『大冒険』。ムーミンと読書の楽しさをどんな風に組み合わせるのかと思ったら、なんと絵本の世界に迷い込ませるしくみ。絵本にある森の中、見覚えのある黄色い小径や小さな生き物たち、少しいくと海もある。クニットのかばん?ママの毛糸だ!洞窟を覗いてみたら焚き火があって、スナフキンの影がみてる...ゆっくり一人でくつろいでいる姿だ。

絵本の中を歩きながら、絵に添えられた文章にも目がとまる。トーベの字だ。小さな子は大人に手をひかれながら、ひとつひとつ読んでもらい、体ごと言葉を味わおうというのだ。ムーミンが大好きな人ならば、振り向いた瞬間に見える光景や小さな生き物や絵のディテールから、絵本のテキストが蘇ってくるかもしれない。読んだときの感覚までもが懐かしく蘇る。

絵本の世界を再現してくれたのは、ヘルシンキ市立劇場の舞台美術を手がけている方。お芝居の舞台では典型的といわれる背景セットの手法を使っているそうだ。とにかく「絵本の世界、その雰囲気が漂うように」と製作されている。絵本を読むときの「小さな何かを発見する楽しみ」というワクワク感まで演出してくれている。

またここでは定期的にワークショップがある。編み物したり、子供向けにはモランを一緒に作ろう(ワークショップ名が「モランオペラ」っていうのも味わいが)なんていうのもある。少し大きな子たちにはコミックの描き方講座。どのワークショップもいろんなアプローチの仕方で、気持ちを表にだすこと、それを言葉に結びつけてあげることの工夫があるように思う。

絵本の世界は本当に小さなスペースの展示なのだけど心地良すぎて、昼寝とかピクニックとかしたいくらいだ。そのほか初めて紹介されるトーベの原画がいくつかある。ほんの数点ではあるけれど、絵本を手がけたときの過程が明らかになる。また定期的にトーベとトゥーリッキのドキュメンタリー映画、夏の暮らしやヨーロッパの旅も上映される。『大冒険』にぴったりかもの二人の時間を他の人たちと一緒に共有できるというのも嬉しい。

ここは入場無料。10月31日までですし、フィンランドにお越しの予定がある方は、ぜひお立ち寄りください。詳細情報は新聞博物館サイト をご覧ください。

森下圭子

 

こうやって絵本の世界の中に入り込んでいきます。
画像提供PÄIVÄLEHTI. MUSEO

絵本の世界を体全体で体験しよう。
画像提供PÄIVÄLEHTI. MUSEO