コミックス連載2周年を記念して作られた、ムーミンの最初のテーマソング。楽しいメロディを聞いてみて!


ムーミン・コミックスのシリーズは、1954年に世界最大の夕刊紙「イヴニング・ニューズ」で連載が始まりました。ムーミンの最初のテーマ曲はその2周年を記念し、当時著名な作曲家だったロバート・ファーノンに依頼されたものです。

イギリスでは『たのしいムーミン一家』が1950年、『ムーミン谷の彗星』が1951年に出版されたため、1952年には、ムーミンはイギリスで知られるようになっていました。1952年の初め、トーベ・ヤンソンは、「イヴニング・ニューズ」や「デイリー・メール」などを配信していたアソシエイテッド・ニューズペーパーズ社から連絡を受けました。アソシエイテッド社の役員チャールズ・サットンはトーベに手紙を送り、「ムーミンは子どものためだけでない、刺激的なシリーズになる可能性があると思っています」と説きました。ここからサットンとヤンソンの間で何年にも及ぶ熱いやりとりが始まり、それがコミックスシリーズの出版の基礎となったのでした。

売り上げを伸ばすために曲が作られたコミックス・シリーズは、ムーミンが最初でただ一つ

サットンは、ムーミンシリーズを他紙にも展開することを決めました。サットンが担当する部署では、売上を伸ばし、市場を拡大するための様々な方法をいつも模索していたのです。

1954年の9月20日、ムーミンシリーズは「イヴニング・ニューズ」で連載を開始しました。そしてそれから2年後、当時イギリスで最も有名な作曲家・指揮者の一人だったロバート・ファーノンに、ムーミンの楽曲が依頼されたのでした。

この曲は1956年7月8日にBBCテレビでロバート・ファーノンのオーケストラによって初めて演奏されました。ファーノン自身が熱心に、視聴者にこの曲を紹介しています。「多くの方がムーミン・コミックスを知っていると思います。この作品には、コメディから英雄物語までたくさんのお話があります。ムーミントロールは、私の想像力に強く訴えかけてきます。だから、私はムーミントロールのハッピーで、ときに悲しく、滑稽で、ユーモラスなキャラクターを表現したいと思い、この楽しい小さな曲を作曲したのです」と語っています。

ムーミン・コミックスは、プロモーションのために曲が作られた最初のコミックスシリーズです。著作権上の理由から、曲はOle Jensen(オーレ・イェンセン)というペンネームで録音され、メロディ・ライト・オーケストラの名で、デンマークのラジオ・エンターテイメント・オーケストラが演奏しました。

トーベが作詞とイラストを担当

サットンとトーベは、契約書や原稿、登場人物などについても、熱心に議論を交わしました。トーベにも楽譜が送られましたが、トーベが楽譜を読めなかったので、すぐにその後音源が送られました。トーベはそれを受け取り、歌詞を書くことができました。その「Balen i Mumindalen(ムーミン谷の踊り)」はライラ・ヤルヴィネンによってフィンランド語に翻訳され、タイトルは「Muumilaakson kevätjuhla(ムーミン谷の春のまつり)」となっています。

この曲に添えられたイラストは、もちろんトーベ自身によるものです。原画はフィンランドのタンペレにある、世界でただ一つのムーミン美術館に所蔵されていて、他の原画と一緒に展示されています。

 

あなたはこの曲を聞いたことがありますか? 楽しくて、哀しくて、少し間抜けで、ユーモラスなムーミントロールを思い出しませんか?

翻訳/内山さつき